「皿男/電話の幽霊」他

 我ながらよく歩いたものだ。道の左手には赤と黄色のポストが並んでいる。いつものことだが、海岸線が異様に長い。
 逗子に住む由利の家からは歩いて戻った。この訪問は下田に向かう途中、列車の待ち時間で、東京駅からかけた電話に始まる。
「今どこにいるの」と問われて私は話をそらした。電話の脇に据えてある小型の印刷機から、私たちの会話が逐一プリントアウトされてゆくのがみえる。彼女が突然笑いだして言った、
「今朝十時に目が覚めたら、居間で電話が鳴ったの。ファクシミリが送られてきて、午後にあなたから連絡があるだろうって書いてありました。あなたと話をする夢をみたから、新聞社の人が気をまわして、そんなふうに書いて送ってきたのね...」


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