校舎の前で知り合いの女に会ったので、最近見かけないが由紀子はどうしているのかと尋ねる。彼女は由紀子の家を知っているというので、案内してもらうことにした。由紀子の家は街はずれの森の中にある。森の中の砂利道を抜けて彼女の家へ向かう。砂利道にはそこここに水溜まりが点在する。
この森には以前来たことがある。随分昔の、私がまだ小学生の頃だ。この道を真直ぐ行くと途中の樹の幹に大きく×印が刻んであり、その根元には何かの生きものの屍体が埋めてあるのだという。先へ進む者を制する凶兆だ。森のはずれには祠がある。
私は突然に、由紀子の家など今まで何度となく行っていたことを思い出した。
「もうすぐだから」と言って女が意味ありげに腕を振って見せた。緩い袖口から女の白い手首がのぞくとその手首から前腕にかけて鋭い刃物で長く引いた大きく深い傷口が見え傷口には血の一滴も流れずただ青白い肉の色が透けて見えていた。私は立ち止まる。手前に見える脇道を曲がれば由紀子の家はすぐそこの筈だった。