12月19日(水)
〜戦争博物館とワイナリー〜●1、戦争記念館を見学
前日に引き続き、この日の午前中は、キャンベラの主要な博物館の一つであるエンズリー山麓の豪州戦争記念館(Australian War Memorial)に出かけた。
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▲戦争記念館中央の礼拝施設(左)と駆逐艦の127ミリ速射砲(右)
この記念館は、これまでオーストラリアが参加した戦争で戦死した将兵を慰霊し、名誉を懸賞すると共に、国軍の歴史や武器を展示するもので、同国がこれまでずっと戦勝国であったためか、展示物の解説一つ一つが自信に満ちているように感じられた。
展示物もこの種の博物館としては豊富で、屋外には退役したパース級ミサイル駆逐艦から取り外した127ミリ速射砲Mk42やナチス・ドイツの列車砲の砲身、英巡洋艦「ブリストル」の主砲砲身等が置かれている。内部は、中央の慰霊施設の左右に展示室があり、一次大戦、ニ次大戦といった戦争毎に区画され、実物の軍服や武器、ジオラマに再現された戦場などがある。朝鮮戦争、ベトナム戦争の展示室には当時の実物の装甲歩兵戦闘車も置かれていた。
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▲ベトナム戦争に参戦した装甲歩兵戦闘車(左)と朝鮮戦争の豪州兵(右)
入り口と反対側には、最近建設された「アンザック・ホール」という航空機格納庫ぐらいの大きさの展示室があり、ここに実物の軍用車両や航空機が集められている。べトナム戦争で使われたUH-1輸送ヘリや米軍の戦車、一次大戦で使われた世界初の戦車「Mk1」、ハーフトラック、ゼロ戦(零式艦上戦闘機)、94式軽戦車等だが、最大の展示物は中央に置かれた旧日本海軍の特殊潜航艇「甲標的」で、シドニー湾に潜入しようとして爆沈した潜航艇を、爆破された傷跡はそのままに紹介し、鹵獲の経緯等について説明のパネルがある。それによると、爆沈し戦死した潜航艇搭乗員の遺体を収容し、これを栄誉礼を以って軍葬に付した件について、当時の豪海軍当局と世論の間に争いがあったが、「勇敢に戦った搭乗員は敵であっても敬意を表することは正しい」とした海軍当局が押し切ったという。
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▲米軍戦車(左)とイギリス製マークT戦車(右)
第二次大戦のコーナーでは豪州の主たる「敵」であった旧日本軍の捕獲品も多数登場。将校の軍刀や寄せ書き類の他、特攻隊で戦死した軍人の遺書も(英訳つきで)展示されており、特にこの遺書は別れゆく妻に対する想いを書いたもので涙を誘われる。無論、これらの品々は戦勝国が敗戦国のものを捕獲・陳列したもので、戦勝を誇るものではあるが、その展示方法はそこまで傲慢でもなく、相手国にも一定の敬意払っているように感じられた。
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▲旧日本兵の遺品(左)と東ティモール国際軍に派遣された豪州兵の制服(右)
更に驚いたのは、この展示が最近の豪軍の国際貢献活動を反映しているということで、朝鮮戦争のコーナーの隣には、東ティモール国際軍(INTERFET)に派遣された当時の写真や制服がいち早く展示されていた。
●豪州戦争記念館(Australian War Memorial)
GPO box 345, Canberra City, ACT 2601
e-mail:information@nma.gov.au
phone:02-6243-4211
open:10am-5pm daily, closed Christmas day●2、マヌカで豪州式昼食
午前中に戦争記念館を見学した後、昼食をマヌカ商店街(Manuka shops)のキャピタル・テイクアウェイ(Capital Takeaway)でオージー式昼食をとった。実は、これまでの食事は中華料理やインド料理等が中心で、オーストラリア伝統のハンバーガーだのポテトだのをまだ食べていなかったのだが、よくよく商店街を見渡してみると、9年前にはそこそこの数存在した地元ハンバーガー店が少なくなり、代ってお洒落なカフェやレストランが増えていて、逆にそうした豪州式食事が出来る店が見つからなかったのである。
私が注文したのは「ローストビーフ・アンド・チップス」で、薄切りにした牛肉にソースをかけ、ポテトを皿に盛りつけた単純なもの。普通に食べれば特段美味というわけでもないだろうが、この田舎っぽさが懐かしくてよかった。
▲ローストビーフ・アンド・チップス
●キャピタル・ティクアウェイ(Capital Takeaway)
Flinders way, Griffith, ACT 2603
e-mail:information@nma.gov.au●3、ワイナリー訪問、バンゲンドールの町
さて、田舎料理で腹が満たされた後、今度は車で郊外に出、ACTの東側周辺に点在するワイナリーの一つ「ラーク・ヒル」(Lark Hill)を訪れ、更にニュー・サウス・ウェールズ州バンゲンドール(Bungendore)の町を通ってキャンベラに帰った。
町から車で30分ほどの距離にある「ラーク・ヒル」というのはワイナリーのブランドの一つで、受け付けを守るおばさんは「子供が日本に就学旅行に出かけたことがある」ということで会話も弾み、土産物のワインを2本購入。一方、バンゲンドールはキャンベラから東海岸に抜ける国道52号線の途中にある町で、長方形の格子状に配置された町の中心部を国道が通るという、典型的な豪州の田舎の町。特に観光資源があるわけでもなく、生活感漂う町ではあるが、中心街には小奇麗な公園や写真館等があり、木細工の店には綺麗に研磨された木で作られたリンゴの置物などが売られていた。
なお、この日の夕食は、アイザックス(Isacs)商店街の中華料理店「シルク・ロード」(Silk Road)でとった。
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