私は制服から着替えて下へ降りていった。いつものように‥‥‥‥
「ああ、レイ来たか。そこの食器下げといてくれないか」
「うん、いいよ」
そういって私はお勘定を住ませたお客さんの皿を下げ、洗い始めた。
次から次へとお客がやってくる。
おじいちゃんの店 『居酒屋ゲンさん』 は結構はやっている。おじいちゃんが大学で教えた生徒や大学の先生などがよく来てくれる。おじいちゃんを知らない人もつられてやってくる。そんな感じでいつも賑わっていた。
私はこういうの好きなんだけど、お姉ちゃんは静かなのが好きみたい。一卵性双生児なのにどうしてこうまで性格が違うんだろう。外見は同じで見間違うくらいなのに‥‥‥
まっ、それが個性ってもので、それぞれの良さがあるんだろうけど。
となりのトリオ Walking:01 待ちなさーい (B)
ガラガラガラ
戸の開いた方に声をかけた。
「いらっしゃいませ」
男の人が一人入って来た。今まで見たことない人だ。でも、この面影、どこかであったような‥‥‥まさかね。
「元気そうじゃないか、碇」
「はい、冬月先生こそ。この度は、ありがとうございます」
「ああ、かまわんよ。それよりユイくんはどうした?」
「家内は部屋の片づけで忙しいらしく‥‥‥‥」
「それで、お前だけ逃げてきたのか。ま、おまえらしいな。でもシンジ君がかわいそうだな」
「ええ、ですが、問題ないでしょう」
「そうか」
おじいちゃんの知り合いみたいね。今日引っ越してきたのかしら。
「おじいちゃん‥‥‥」
「おっ、すまんすまん。紹介しよう、私が教えていた生徒で “碇ゲンドウ” くんだ。今度、市立大へ赴任することになってな」
「大学の先生なの?」
「ああ、それも教授だ。この年で」
「へぇ、よろしく碇さん」
「ああ、よろしく」
「レイ、この店の名前、『居酒屋ゲンさん』はこいつが付けたんだ」
「そ、そうなんですか」
おじいちゃんにしては、趣味悪いと思っていたけど、おじいちゃんが付けたんじゃなかったんだ。
でも、結構この名前気にいってんのよね。店の雰囲気にあってるし。
「あ〜遅刻遅刻。どうして、おじいちゃんはもっと早く起こしてくれなかったのよー」
「しょうがないわ、昨夜は久しぶりにおじいちゃんも飲んでたから」
「そうよねぇ、あの碇って人が来たから‥‥‥」
「時間がないわ、近道していきましょう」
「近道って、そこ人んちじゃないの、もう」
二人はしゃべりながらもひたすら走っていった。
キンコンカンコン‥‥‥
「ふう、なんとか間に合ったみたいね」
「ええ」
「レイ、メイ遅いわよ。なにしてたの?」
「ごめん、ヒカリ。変わりに明日の週番の仕事は私がやっとくから」
「そう?でもいいわ」
「ありがとう、さすがヒカリ」
「レイもお店手伝ってるから大変だものね」
「まあね」
私は待ちきれないようにたずねる。メイは興味ないっていうように自分の席に向かっていった。
「ねぇ、ヒカリ。転校生ってどんな子かなぁ」
「さぁ‥‥‥‥」
私とヒカリの話を聞いてトウジとケンスケが話に入ってくる。
「なんや委員長、転校生が来るんかいな」
「ええ」
「それは、初耳だねぇ。俺の情報網に引っかからなかったとは」
「で、そいつはええ女なんか?」
「そう、それが一番聞きたかったんだよ」
「鈴原くん、ここにヒカリという極上の美人がいながら二股かける気?」
「二股って、誰と誰にや」
「誰とだ「鈴原、転校生は男の子よ」よ」
ヒカリがレイの言葉を征するかのごとく大声を出す。
「なんや、男かいな」
「そ、そうよ。ごめん、ヒカリぃ」
「なにがごめんなんや」
「さ、さぁ」
キンコンカンコン
1時間目の始まりのチャイムが鳴る。
ガラガラ
ミサト先生が入ってきた、一時間目は社会だけどSHに来なかったところをみると、また遅刻のようね。
「起立、礼、着席」
「はい、それでは今朝できなかったホームルームをこれからやります。まず、本日のビックイベントからいきましょうか。今回は残念だけど男子にはお預けね。よろこびなさい、女子。転校生は男、それも結構いい顔しれるわよ」
ミサト先生がそう言うとみんな入り口の方をみる。その瞳にも、いろんなのがあるけど‥‥‥
「入ってきていいわよ、碇シンジくん」
碇?どっかで聞いた名前だなぁ‥‥‥‥まさか!
ドアが開く。私も思わずそっちの方を見た。