第1話 再会
第1話 再会
「シンジ君、開けるわよ」
「ミサトさん、出ないんだ、涙が。悲しいと思ってるのに出ないんだよ、涙が」
「シンジ君、今の私にできるのはこのくらいしかないわ」
「やめてよ。やめてよミサトさん」
「ごめんなさい」
(寂しいはずなのに、女が怖いのかしら。いえ、人とのふれあいが怖いのね)
「ペンペン、おいで」
(そっか、だれでもいんだ。寂しかったのは私の方ね)
トゥルルルルル、トゥルルルルル、トゥルルルルル、‥‥‥‥‥
「はい、もしもし、なんですって、シンジ君」
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レイが廊下の窓から外の景色を眺めている。
「綾波っ」
「‥‥‥‥」
「よかった、綾波が無事で」
「‥‥‥‥」
「あの、父さん来てないんだ」
「‥‥‥‥」
「ありがとう、助けてくれて」
「何が?」
「何がって、零号機を捨ててまで助けてくれたじゃないか、綾波が」
「そう、あなたを助けたの」
「うん、覚えてないの?」
「いえ、知らないの。たぶん私は3人目だと思うから」
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レイ、マンションの中
ゲンドウの眼鏡を握りつぶそうとして涙をこぼす。
「これが涙。初めて見たはずなのに初めてじゃないような気がする。なぜ泣いてるの?」
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−ミサトのマンション−
トゥルルルルル、トゥルルルルル、トゥルルルルル、‥‥‥‥‥
「はい、もしもし」
『そのまま聞いて。あなたのガードを解いたわよ。今なら外に出られるわ』
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「無駄よ、私のパスがないとね」
「そう、加持君の仕業ね」
「ここの秘密、この目で見させてもらうわよ」
「いいわ、ただしこの子も一緒にね」
「いいわ」
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人工進化研究所 3号分室 と書かれた部屋にはいる。
「まるで、綾波の部屋だ」
「綾波レイの部屋よ。彼女の生まれ育ったところ」
「ここが?」
「そ、生まれたところよ。レイの深層心理を構成する光と水はここのイメージが
強く残ってるのね」
「赤木博士、私はこれを見に来たわけじゃないのよ」
「わかってるわ、ミサト」
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「エヴァ?」
「最初のね、失敗作よ。十年前に破棄されたわ」
「エヴァの墓場」
「ただのゴミ捨て場よ。あなたのお母さんが消えたところでもある。覚えてない
かもしれないけどあなたも見ていたはずなのよ。お母さんが消える瞬間を」
「リツコ」
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「これがダミープラグの元だというの?」
「真実を見せたげるわ」
リツコがリモコンのスイッチを押す。周りにたくさんのレイが浮かんでいる。
「綾波レイ」
「まさかエヴァのダミープラグは‥‥‥」
「そう、ダミーシステムのコアとなるもの。その生産工場よ」
「これが‥‥‥」
「ここにあるのはダミー。そしてレイのためのただのパーツにすぎないわ。人は神様
を拾ったのに喜んで手に入れようとした。それが15年前せっかく拾った神様が消
えてしまった。でも今度は神を自分たちで復活させようとしたの、それがアダム。
そしてアダムから神様に似せて人間を作った、それがエヴァ」
「ひと?人間なんですか?」
「そ、人間なのよ。本来魂がないエヴァには人の魂を宿らせてあるもの。みん
なサルベージされたものなの。魂の入った入れ物はレイ、一人だけなの。あ
の子にしか魂は生まれなかったの。ここに並ぶレイと同じものには魂がない。
ただの入れ物なの」
「そんな、それじゃあ綾波は‥‥‥」
「人間じゃないってこと、リツコ」
「いえ、人間よ。さっき言ったでしょ。お願い、シンジ君、レイを、守ってあげて」
「えっ、僕がですか」
「そう、あなたよ。私たちにはそんな資格はないの。2人目のレイは変わったわ、
あなたのおかげで」
「でも、綾波は‥‥‥」
「シンジ君、つらいかもしれないけどこれが現実なの。残りのレイは消すわ。そう
しないと人間にはなれない」
「リツコ、あんた何言ってんのかわかってんの」
「ええ、わかってるわ。でも、そうしなければレイはまた死を選ぶでしょう。
それに、‥‥‥‥‥‥」
「私がやろう。そうすれば君たちは傷つかないですむ」
「ふ、副指令。なぜここに?」
「このことは碇には秘密にしておいてくれ。マギの誤作動かネズミの仕業だと。
シンジ君よろしく頼む。私ができることはこのくらいしかない。だが、君には
できることがある」
「副指令、いんですか」
「ああ、かまわんよ。さ、もう出ていた方がいい。赤木君、あとでMAGIのレコーダを
いじっておいてくれんかね」
「わかりました」
「‥‥‥」
冬月がリモコンを操作すると周りに浮かんでいたレイたちがくずれてゆく。
その光景を、リツコと、冬月はじっとみていた。
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