12月28日

大きな軍艦。昔「交通機関の発達」と云う図鑑で見た、(名前を思い出せない)ひどく単純なつくりの漁船のような小さな船を思い出した。
銅色ののっぺりとした鍋のような胴に、木造の甲板と屋根がついていたが、私はその船が好きで、図鑑を前に置いて色々な角度から何度もその船の絵を描いた。軍艦の甲板に立っていると、向うの方から腕の長さ程の、透明な、細長い寒天のようなものがいくつも並んで跳ねてくる。飛び上がって甲板にぶつかっては潰れ、そこからまた立ち上がって、細長い形に戻ってはまた甲板に潰れ、そのまま船縁に向かっていった。そのうちの一つが音を立てて海へ飛び込んだ瞬間、それが鮃だと云うことが分かった。
平べったい白い腹が、いくつも続けざまに翻って海面に落ちて行く。船縁に立って覗くと、水が透き通って海の底がはっきりと見えた。鮃は腹を返して死んでいたが、その腹が割れて、中から真っ黒い烏賊のようなものがずるりと這い出てきて、海の中をどこかへ泳いで行った。つい先ほどにも似たような光景を見たことをすぐに思い出した。その時は鮃ではなく何か別の魚だったが、中から出てきたのが何だったのかは全く思い出せない。


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