1.6. 新規契約の裏技
 

1.4.章で述べたスマイル・シップなんですが、どう考えても害の方が大きいですよね。ノルマと呼べばそれまでなんですが、スマイル・シップを取れるまでは必死に頑張って、取れたら後は流しちゃう訳ですから。かといって新規契約業務の場合、一地区を2週間程度で廻る訳ですけれど、2週間単位のノルマ設定をした場合、ハズレの地区にあたった時に目も当てられなくなるので、そうした方が良いってのは一概に言えないんですけど。 

それで本章の主題に入っていく訳ですが、貴方は 

    「そもそも毎回新規3件も取れると思いますか?」
ってのが沸きませんか? いかに人の出入りが激しい東京だとはいえ、区画で言えば2町程度の範囲を数回に渡って開拓して、その度に3件も契約が取れるのか? と言う事です。はっきり言いましょう。4月とかの特に人の出入りが多い時でもない限り無理です。では前述のスマイル・シップはそんなに獲得できなかったと言うとそうでもないんです。ここに大きなからくりが有るのです。 

種明かしをすると、契約はすべて1件にカウントされるんです。 これだけじゃ、何の事か分からないでしょう。もう少し詳しく書くと、新規開拓業務は現在NHKと契約を結んでいない世帯を巡る訳ですが、そういう時にはシバシバ引越しをされて転入されてきたばかりの方がいる訳ですが、そういう方々はガス・電気・水道等のライフラインに直接関係するものはきちんと転出・転入手続きをしていても、NHKの手続きはあまりやられていないんですよ。ここで 

    「転入届をお願いします」
って一言で転入届を書いて貰えば、賃金計算上これが新規契約と同じとみなされる訳です。 

さらに極端な事を言えば、律義に転入手続きをされていても全く構わない訳です。ここで 

    「あれ、私の契約台帳には載せられていませんね。手続きが間に合わなかったかもしれないんですが、もしかして手続きミスかもしれません。一応確認の為転入届を書いて貰えますか?」
と言えば、疑われる方はいませんでした。実際2重取りになる訳で無く、契約者名簿に掲載する時に弾かれるだけで、バイト君が新規を一件取ったのと同じカウントがされるだけです。 

さらにこの平成初頭には他の時期には無い大きな旨みが有りました。この時期にNHKに起こった大きな転機を迎えたんです、覚えていますか?そう、衛星放送が開始されたのです。衛星放送を受信すれば、衛星放送契約に変える必要がある訳ですがこの契約変更もほおっておけばやってくれる訳も無く、我々新規開拓者が契約台帳を見てパラバラアンテナが立っているのに契約変更を行なっていない世帯を見つけたら、お伺いして手続きしてもらう訳です。 

パラバラ・アンテナが立っているのが、美味しいですよね。鴨葱と言うべきか、お子様ランチの旗と言うべきか、或いは蛍の光か、幸せの黄色いハンカチか? とにかく、アンテナが立っていれば 

    「私 BS放送見ています。契約変更に伺って下さい」
って言っているみたいな物ですから。当時はパラボラ・アンテナが立っていれば自然に笑いが込み上げてきた覚えが有ります。 
 
 
 
 
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