Ten O'clock, Wednesday
 
<水曜、夜10>


馴れ初め編

いつもその曜日になるとわくわくしていた。その日だけは10時前にちゃんと宿題も済ませて、お風呂にも入って、机の隣りにあるラジカセにカセットテープをセットして・・・ そして神妙な顔して10時を待った。そのうきうきのミナモト、当時の活力の源となった私にとっての超スーパー番組とは、NHK FM甲斐よしひろの“サウンド・ストリート”。

甲斐よしひろを知らない人も今ではいるでしょう。その昔、学園祭では女の子の失神者を大勢出し、大変な騒ぎを起こしたこともあるという甲斐バンドのリーダー、それが甲斐よしひろです。代表的な曲に“安奈”、“HERO”などがあります。

10代の半ばは、私にとって地獄の時。思春期の真っ只中、そして受験の重圧の中、なぜか友達を作る気も起こらず自分の殻に閉じこもりっぱなしで、毎日生きてることが嫌で嫌でしょうがなかったのでした。そんな時、ある晩ふとつけたラジオから飛び出してきた、しわがれてがらがらの声。その主が甲斐よしひろでした。

その人はなにやら新しいバンドのことを誉めている。とてもいい、と言っている。そしてそこから聞こえてくる音楽。とてもハイセンスで胸にしみるいい曲ばかり。少し経ってからわかったのですが、その番組のポリシーとして洋楽はかけないということでした。甲斐自身が、売れなくて埋もれてはいるけれど、それでもいい曲ばかりを探してきてはその番組で流していました。そのこだわりが好きだった。そして甲斐の生きることに対する誠実でまっすぐな姿勢。その後の私の人生に大きな影響を及ぼした甲斐の一言一言が、そこにはありました。

かかっていたのは、ロック、グループサウンズ、童謡、演歌、ポップス、レゲエ、歌謡曲などなどなど・・・。節操がないといえばそれまでですが、けれどそのどれもが心にしみる名曲ばかりだったのは疑いの余地もありません。例として、グループサウンズ当時の伝説のバンド“ジャックス”、レゲエ風ではあるけれど、日本の湿っぽさが感じられる“ビジネス”、ちょっと変わったバンド“チャクラ”、甲斐の好きな童謡“砂山”などなどです。今では大好きな矢野顕子を知ったのもこの番組、そして、喜納昌吉を知ったのもこの番組でした。

始めの頃の番組は残念ながら2本しかテープが残っていないので、おぼろげな記憶だけで書いていこうと思います。ご了承ください。




続き >>> サウンド・ストリート印象編

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