私たちピアノは、ギターなどよりずっと強いものです。しかしギターと同じく美しい心はけっして忘れてはいません。だからこの世の中は醜くて醜くてしかたないときもありますが、悲しみの中から闘志がわきあがってくるんです。だからピアノはいつでも、正しい者のみかたですし、正しい心に勇気を与えるように音を生産してきたのです。しかし人間というのは不思議に堅いもので、どんなに美しく、どんなに希望を心に満たしてやろうとしても、そちらでうけつけないことがとても多いんです。なぜもっとすなおになれないんでしょうか。ピアノは人のために生まれて人のためにあるものなのに、ぼくらの一部の人に反抗しなければいられなくなっています。ただ、愛を説くだけではどうしてもだめなことがあるものですから。