地理教師奮戦記
ぬかる民の授業実践
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第3回:授業プリント
私の授業では、ほとんど毎回、教科書や板書の補足として、参考プリントを配布しています。
これの作成、印刷が大変で、1時間の授業用に、最低1時間は教材つくっています。
高2用と中1用の授業プリントを1枚ずつ公開しましょう。
なお、、スペースの関係上、図表の掲載は省略しています。
高校編
地 理 B 参 考 プ リ
ン ト 980516(SAT)
◎ 堆積平野(教P61、62)
◇全体の特徴
・川や風が運搬してきた土砂が、低いところに堆積してできる←外作用。
・比較的小規模な平野が多い。
ちゅうせき
・沖積世(1万年前〜現在)になってからできはじめる(洪積台地はそれ以前)→沖積平野ともいう。
1扇 状 地(せんじょうち)
◇できかたと特徴
・山と平地の境目に、川が運搬しきれなくなった(流れが遅くなるため)粒の大きな砂や礫(れき=じゃりのこと)
が扇状に堆積してできた地形。盆地の周囲に多い。
・地形図の等高線は、扇頂を中心とした同心円状に引かれる。
・大粒の砂や礫でできているため、水はけが良い。
・川は扇状地内にしみこんで伏流水となる。地上では水が無くなったように見えるため、水無川となる。
・比較的急な傾斜。
・水田としては不適←表面に水が無いため。
◇扇状地の部分的な名称と土地利用
A, 扇 頂(せんちょう)
・扇状地の頂上(頂点)の部分。
・水は豊富(川の水がある)だが、山の中なのであまり利用されない。
B, 扇 央(せんおう)
・扇状地の中央部。
・水はけが良いため、川の水は地中にしみこんで伏流水となってしまい、川は水無川となる→水が得にくい。
・洪水時は、河川は網状流路をなす。
・水田や住宅地には不適→かんがい設備の導入→現在は水田になっている所も。
↓
・畑地や桑畑、果樹園などの利用が多い。最も開発が遅い。
C, 扇 端(せんたん)
・扇状地の最下部。
・伏流していた川が、泉となって湧き出す湧水帯→良質の水が豊富。
・集落ができやすく、そのさらに下には湧き水を利用した水田が広がっている場合が多い。
◇複合扇状地→山の斜面に、扇状地が複数連続して分布している地形。
(例:北アルプス東斜面、養老山地東斜面)
地 理 B 参 考 プ リ ン ト 980519(TUE)
2三角州(デルタ)(教P62、地理資料P57)
◇できかたと特徴
・浅い海底や湖底や凹地に、川が運搬してきた土砂が堆積してできる(河口付近)。
・シルトや粘土で形成。肥沃な土壌。→→→┐
・豊富な水(川・地下水)→→→→→→→→→水田に最適。大都市の多くが立地。
・極めてゆるい傾斜→→→→→→→→→→→┘
↓
・地形図上で、等高線の本数は、極めて少ない。
・低い標高(ほとんどが標高10m以下)。
・洪水の危険が大きい。
◇三角州の種類
弧 状 三 角 州
・形が半球状
・例:ナイル川下流
鳥 趾 状(ちょうしじょう) 三 角 州
・形が鳥の足のような形で、たくさんの支流と、細長い陸地が特徴。
・アメリカのミシシッピ川河口
カ ス プ 状 三 角 州
・形が逆三角形状
・例:イタリアのテベレ川下流、スペインのエブロ川下流
三 角 江(エスチュアリー)
・河川の河口部で、三角州が、内作用により沈降→河口部がラッパ状になった地形。
・例:イギリスのテムズ川河口、フランスのセーヌ川河口、
◇三角州内の小地形
A, 自 然 堤 防
・洪水時の土砂が、河川の周囲に堆積してできた微高地。
・集落や畑になりやすい←洪水に比較的強いから。
B, 後 背 湿 地(氾濫原)
・自然堤防の背後に広がる湿地。
・最も標高が低く、水はけが悪い→洪水の危険性が最も高い。
・水田になりやすい。
C, 天 井 川
・周囲の平野より、標高が高くなった河川。
・人工の堤防をつくったことにより、堤防内に土砂が堆積して形成→さらに堤防を高くする必要。
☆ 三角州と扇状地の比較
┌─────┬───────────┬─────────────┐
│ │ 三 角 州
│ 扇 状 地
│
├─────┼───────────┼─────────────┤
│形成場所 │ 河口付近の海底・湖底 │
山と平地の境目の谷の部分 │
├─────┼───────────┼─────────────┤
│土 砂 │ シルトや粘土 │
あらい砂や礫(れき) │
├─────┼───────────┼─────────────┤
│傾 斜 │ ほとんど平坦
│ かなり急傾斜 │
├─────┼───────────┼─────────────┤
│水資源 │ 大変豊富 │
扇央では不足(伏流水に) │
├─────┼───────────┼─────────────┤
│土地利用 │ 後背湿地→水田 │
扇央→畑・果樹園・桑畑 │
│ │ 自然堤防→集落
│ 扇端→集落(湧水豊富) │
├─────┼───────────┼─────────────┤
│等高線 │ ほとんど引かれない │
同心円状 │
└─────┴───────────┴─────────────┘
地 理 B 参 考 プ リ ン ト 980520(WED)
◎ 洪積台地(教P62)
◇特徴
・でき方→1万年以上前にできた三角州や海岸平野が、内作用によって隆起して台地になったもの。
・土地利用→昔:水がえにくい→畑地や森林に
現在:高級な住宅地に←洪水に強い、地震に強い、景色がよい、空気がよい、
・洪積台地に河川が流れていると→侵食作用により河床が低下・台地の隆起or侵食基準面の低下
↓
だんきゅうがい
河川の両側に階段状の地形が形成=河岸段丘
・河岸段丘の名称→段丘崖→崖の下は湧水地→集落できやすい
段丘面→水を得にくい
↓
最も低位の段丘面から段丘一面、段丘二面、…と数える。
・洪積台地の例→千里丘陵、泉北丘陵、上町台地、枚方丘陵(以上大阪府)、
西山丘陵(京都府)、
名古屋台地(愛知県)
武蔵野台地、多摩丘陵(以上東京都)、
上総台地、下総台地(以上千葉県)、
常総台地(茨城県)、
・有湾台地→洪積台地が直接海に面している地形(例:東京湾の神奈川県部分の海岸線)
中学編
社会・地理的分野参考プリント 971208(MON)〜971212(FRI)
2 近畿地方(教P204〜)
1 変わる古都,京都と奈良(教P204,205、地図帳P89)
◎ 歴史をのこす風土(教P204)
☆日本の古都の変遷
奈良(平城京→710〜784年)、京都(平安京→794〜1868年)→古い文化財が多い→内外から多くの観光客。
(難波京→645〜654年、藤原京→694〜710年、恭仁京→740〜742年、長岡京→784〜794年などもある。)
☆条坊制
・平安京などの古代の日本の都市計画制度。碁盤の目のように町を区画した。
・唐の都、長安(現在の西安)の都市計画がモデル。
・南北5.2km、東西4.5kmの長方形の都市区域。
・都市内は直交路型街路網。北から1条2条の順に、九条までかぞえる大路が、さらに正方形の区画の中も、さらに小さい小路によって
16等分されていた。
・都市域の中央北部に、天皇が居住し、政治を行う大内裏(だいだいり)→現在の千本丸太町付近。
・大内裏の周囲は、築地塀(ついじべい)でかこまれていた。
・大内裏の南正面には大内裏の正門である朱雀門(すざくもん)がある。
・朱雀門から、条坊制都市のメインストリートである朱雀大路が南にのびていた(幅約100mにおよぶ)→現在の千本通り。
・条坊制都市は、朱雀大路を中心に東西対称の形になっていた。
・朱雀大路の西側の京域を右京、東側の京域を左京という。
・商業機能として、右京には右市、左京には左市があったと推定されている。
・朱雀大路の一番南側に羅城門(らじょうもん)があり、京の正式な出入り口になっていた→現在の千本九条付近。
・羅城門をはさみ、東西対称な位置に、西寺(さいじ→現存しない)と東寺がつくられている。
・平安京の最も北の大路=北京極大路=現在の1条通り
・平安京の最も南の大路=南京極大路=現在の9条通り
・平安京の最も西の大路=西京極大路=現在の葛野大路付近
・平安京の最も東の大路=東京極大路=現在の寺町通り
☆条里制
・古代日本の農地の土地区画制度、直交路型で農地を区画。
・唐の均田制がモデル。
・律令制にともなう班田収受法にもとづいて建設。
・土地を654m=1里四方の正方形に区画。一辺を条、もう一辺を里の単位で土地区画に番号をつける→1条、2条、…、1里、2里、…、・1里四方の区画を109m=1町四方の正方形を36等分して細区分。109m四方の区画に1〜36まで 番号をつける。
・条里制度の位置の特定のしかた→〜国〜郡x条y里〇〇坪
・条里制の土地区画の分布=当時の朝廷の支配地域=秋田・盛岡〜九州中部、
☆条坊制と条里制の共通点
・どちらも古代日本の計画的な土地区画制度
・どちらも直交路型道路網
☆条坊制と条里制のちがい
・条坊制は都市の土地区画制度。
・条里制は農地の土地区画制度。
☆その後の平安京
・鎌倉時代以後→右京の衰退←右京はもともと低湿な土地。
・応仁・文明の乱(1467〜1477年)による大破壊
↓
左京は上京(公家町)と下京(商人・町人町)に分離→室町通りが両京を結ぶ。
☆ 秀吉の京都改造事業
応仁・文明の乱で荒れ果てた京都を、秀吉が新しい都市計画で復興させた。その当時の都市構造が現在の京都の原型になっている。
平安京の左京の外周に御土居(おどい)を築造した。
・御土居の目的→1.外敵からの京都の防御、2.洪水からの京都の防御、
・京の7口→御土居から京の外への出入り口。実際は7カ所以上あった。→現在も〜口という地名で残る。
(例:鞍馬口、荒神口、大原口、白河口、三条口、、鳥羽口、丹波口、四条大宮口、など)
・御土居の内部=洛中、御土居の外部=洛外、
聚楽第(じゅらくだい)の築造
・聚楽第の位置→→現在の千本丸太町交差点の南西付近
・聚楽第の目的→→朝廷や公家や諸大名に豊臣政権の力をみせつける。京都の防衛。
・聚楽第の周囲→→豊臣の支配下にある大名の屋敷を配置
・その後の聚楽第→豊臣政権崩壊後、徳川氏によって完全に破壊される→聚楽廻という地名のみ残る。。
これまでの条坊制の街路と街路の中間に、新たに南北道路を建設。
・目的→1.平安京の都市密度を高める。2.上京(公家町)と下京(商工業地域、町人地域)の連絡を密にする。
東京極大路(現在の寺町通り)と東海道(三条通り)が交わる付近に寺町を、上京に寺之内地区を設置。
・目的→外敵からの防御。
あちこちの街路に遠見遮断や「あてまわり」、袋小路を設置。
・目的→外敵からの防御。
◎ さまざまな歴史的集落
☆宿場町
・宿場町とは→五街道(東海道・中山道・甲州街道・奥州街道・日光街道)などのような主要街道沿いに計画的に設置された交通集落。旅人の 宿泊、休息、飲食、馬継ぎ、人足継ぎ、などの便宜を供与した。
・宿場町の施設→本陣(参勤交代の際、大名が宿泊する宿)、脇本陣(参勤交代の際、家老などの上級武士が宿泊する宿)、旅籠(一般民衆向け の宿)、問屋場(といやば=馬継ぎ、人足継ぎ、などのあっせんをした施設)、高札場(おふれがきの書かれた高札が立てられた広場)、
・宿場町の構造→街道に沿って細長く集落が続く「路村」の形態が多い。しばしば遠見遮断がみられる。
・宿場町の例→品川・箱根・関・草津(東海道)、妻籠(中山道)、内藤新宿(甲州街道)、枚方・守口(京街道)、
☆門前町
・成立の背景(鳥居前町も)
江戸幕府の成立・天下太平・五街道の整備→参詣旅行ブーム
・門前町とは→寺院の門前に形成された町。参拝者相手の飲食店、旅館、みやげもの店などからなる。
・門前町の例→成田市(新勝寺)、長野市(善光寺)、高野町(金剛峰寺)、大津市坂本(延暦寺)など。
☆鳥居前町
・鳥居前町とは→神社を中心に、参拝者相手の飲食店、旅館、みやげもの店などからなる町。
・鳥居前町の例→日光市(日光東照宮)、伊勢市(伊勢神宮)、大社町(出雲大社)、東大阪市石切(石切神社)、など。
☆寺内町(じないちょう)
・成立の背景
浄土真宗の発達←末法到来の意識←多発する戦乱・天変地異、寺院・僧侶の堕落、腐敗←鎌倉期
↓
国司・守護大名・戦国大名からの独立の動き→一向一揆の多発
・形態
浄土真宗の寺院の周囲を信徒の住居が取り囲む形の集村、 遠見遮断、あてまわり、袋小路、環濠、で外敵から防御。
・分布例
大坂(石山本願寺)→上町台地北端に蓮如が本願寺を建立、その南部の上町台地上に町屋を形成。
貝塚、富田林、八尾市八尾・久宝寺、橿原市今井、伊勢市一身田、
☆武家町
・角館町、萩市、鹿児島県知覧町
☆港町
・特徴→北前船の航路や瀬戸内航路沿いに多い。
・例:函館市、新潟市、敦賀市、大津市、丸亀市、日向市、など。
◎ 観光と伝統工業(教P204,205)
☆文化財の種類←文化財保護法による
有形文化財[建築物・絵画・彫刻・仏像など]、
無形文化財[能や歌舞伎、狂言、人形浄瑠璃などの伝統芸能など]、
埋蔵文化財[古墳・建物跡・道路跡、土器、石器、はにわ、青銅器などの出土物]、
民俗文化財[伝統的な祭りや風習など]、他に古い町並みなども1つの文化財といえる。
☆奈良・京都の伝統文化
奈良・京都→多くの寺社や仏像・美術品。能などの伝統芸能の発生→1994年にユネスコの世界文化遺産に指定→国際観光都市。
☆伝統工業
・伝統工業とは→古くからの高い技術にささえられ、その地域に根付いた工業。地元の労働力と原料を使用。
・例→京都(西陣織・清水焼・仏具・京友禅・扇子)、宮津・由良(丹後ちりめん)、奈良(筆・墨)、兵庫県小野市(そろばん)、滋賀県信楽町(信楽焼) 堺(刃物・自転車→鉄砲製造技術を応用)、大阪泉州(タオル・毛布)、豊岡(カバン製造)、伏見・灘(日本酒←良質の湧水を利用)など。
・伝統工業のなやみ→後継者不足、材料不足。
・対策→ハイテク産業への転換
◎ 開発と京都の保全(教P205)
☆京都の町家の特徴
・町家→京都などの古い歴史をもつ都市にのこる古い住宅。
・町家の特徴→ 間口がせまく、奥行きがふかい長屋=うなぎの寝所←間口の広さに比例して税金をとったから。
中2階建ての住宅が多い。
土壁や軒につきだした「うだつ」→火災よけ、どろぼうよけ、
破風、虫籠窓、犬矢来、忍び返しなど
☆歴史的景観の破壊
・生活の近代化にともなう文化財の破壊の例
京都の町並みがマンションなどの高層建築物によって破壊されつつある→バブル経済による地価の高騰→古くからの住民が地上げで追い出される→投機目的の無人のマンションが林立、部屋の所有者は多くが東京人で、部屋の多くが無人→地上げ屋に土地を売ったかつての地主は、土地を売ったお金で京都郊外の高級住宅地に豪邸を新築、一方古くから京都住んでいて追い出された人達は、高い投機目的のマンショ ンに入居することもできずに町を追い出されてしまう→バブル経済によるいちじるしい不公平→無人マンションばかり建ち、景観が乱れる だけでなく人口が減少し伝統的な祭りや行事の運営が難しくなってきている→祇園祭の鉾の引き手もほとんどが学生アルバイト。
JR京都駅ビルと京都ホテルの高層化→古都の景観にふさわしくないという意見多い。
三条〜四条の間の鴨川にフランス風の橋を新設→古都の景観にふさわしいか疑問の声。
☆文化財保存のくふう
・古都保存法で指定→歴史的景観風土保全地区を指定→建物の高さを制限(京都は31mまで)、
建物の色、デザインを周囲の景観に調和させる。あきかん条例の制定。など
・重要伝統的建造物群保存地区→歴史的価値の高い町並みを国が保存する制度。対象地域の歴史的建物の外観修理には、国から補助金がでる。 そのかわり、近代建築に建て替えることはできないし、建物の高さ、デザイン、色が規制される。
・京都の重要伝統的建造物群保存地区の例→嵐山嵯峨野地区、金閣寺周辺、銀閣寺周辺、清水寺周辺、など。
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