オーロラ撮影に必要なもの ・一眼レフカメラ(フィルム、デジタル)または長時間露出のできるデジタルカメラ 撮影に向くカメラやレンズはQ4、Q5、Q6を参照。 ・三脚 数十秒の長時間露出をするので必要です。 望遠撮影ではないのでそれほどしっかりしたものでなくてもよく、 カメラの重さを支えられれば小型軽量の安いもので十分です。 ・リモートレリース、またはリモコン シャッターを押した際にブレないようにするために使います。 無ければセルフタイマーで代用可。 ・予備電池 寒さの厳しくない季節での撮影であれば特別に準備する必要はありませんが、 冬季ではほとんど「必ず」準備すべき物です。寒さで電池がすぐに 使えなくなります。詳しくはQ12を参照してください。 ・高感度フィルム(フィルムカメラの場合) Q10を参照。 ・記録メディア(デジタルカメラの場合) 特別なものは必要ありませんが、マイクロドライブは消費電力や信頼性の面から 止めておいた方が無難です。実際、常温では無故障で使えている340MBの マイクロドライブを-40℃下で試してみたところ、すぐに動かなくなりました。 |
基本的な撮影手順 (1)カメラを三脚に固定する。 (2)フラッシュをOffにする。(とても重要です。フラッシュを炊くと 周囲の観測者や撮影者に迷惑をかけます。) (3)一眼レフカメラの場合、フォーカスをマニュアルフォーカスにして無限遠にする。 フォーカスリングは撮影中によくいじって動かしてしまうので、テープなどで固定して しまっても良いでしょう。 デジタルカメラの場合もフォーカスはなるべく無限遠に固定できれば良いのですが、 マニュアルフォーカスが無い機種もあると思います。完全なマニュアルフォーカスが 無くとも何段階かにフォーカスをプリセットできる場合がありますので、 その場合はフォーカスを無限遠(∞)にセットします。 (4)マニュアル露出にして絞りは解放(F*.*とかで一番小さな値にする)、シャッター速度は Q8を参照して適当な値(10〜30秒くらい?)にセットする。 (5)リモートレリースやリモコン、無い場合はセルフタイマーを使ってシャッターを切る。 (6)デジタルカメラの場合は撮影結果を確認して、暗ければ露出時間を長く、 明るすぎれば露出時間を短くする。 フィルムカメラの場合は、露出時間を適当に変えてみる。 (7)以上、撮影の方向を変えてみたり、前景に木や建物などをいれて工夫し、撮影を繰り返す。 なお、デジタルカメラや電池を使うフィルムカメラでは、しばらくするとよく寒さで電池切れになります。 そのときは懐で暖めておいた予備電池と交換します。詳しくはQ12を参照してください。 その他の詳細は以下のQ&Aをご参考に。 |
Q1.デジタルカメラでオーロラが撮影できますか? A1.デジタルカメラの機種によります。オーロラの撮影には最低10秒程度の長時間露出ができることが必要です。 Q2.デジタルカメラとフィルムカメラで撮影するのではどちらが簡単に撮影できますか? A2.オーロラ撮影に初めて挑戦する場合、オーロラを撮影できるスペックを持ったデジタルカメラで 撮影したほうが簡単かつ確実です。 オーロラは大変暗いためカメラの自動露出が働かず、シャッターを開く時間 (露出時間)を自分で決めてやる必要があります。 初めての撮影では露出の具合を見極めるのが難しいうえ、フィルムは 現像してみるまで結果がわかりません。デジタルならばその場ですぐに結果がわかるだけでなく、その結果を 次の撮影に反映でき、露出のコツを簡単につかめるようになります。フィルムカメラを メインに使う場合にも、デジタルカメラを併用するといいと思います。 Q3.デジタルカメラとフィルムカメラではどちらが綺麗に撮影できますか? A3.残念ながらフィルムのほうがまだ綺麗です。しかし、Canon EOS D30でで撮影した場合、 明るいオーロラはフィルムカメラと比べてもかなり満足できる画質で写ります。 コンパクトタイプのデジタルカメラでも、長時間露出時にノイズリダクションの働くものはかなり綺麗に 撮れると思います。 Q4.デジタルカメラを購入する場合、どのようなデジタルカメラがお勧めですか? A4.Q1で触れたように、まず10秒程度以上の長時間露出ができることが最低条件で、可能であれば余裕を持って 30秒程度のマニュアル露出ができる(シャッター速度と絞り値を自分で設定できる)ものが良いです。 また、レンズは開放絞り値ができるだけ小さいものが良く、 F2.0以下であるのが望ましいです。さらに、長時間露出の撮影後にシャッターを閉じた状態でノイズのみを撮影し、 元の画像からノイズを減算するタイプのノイズリダクションを搭載した機種が綺麗に撮れます。 このタイプのノイズリダクションは、長時間露出にシャッターが閉じた後、数秒(露出時間と同じだけ) 待たされるので、店頭で長時間露出を試してみればわかります。 Q5.フィルムカメラでは、どのようなカメラがお勧めですか? A5.デジタルカメラの場合と同じで、数十秒の露光ができるマニュアル露出機能か、 シャッターを押している間中シャッターが開放されるバルブ(B)機能のあることが最低条件です。 コンパクトタイプでもこのようなカメラがあるかもしれませんが、通常は一眼レフカメラということになります。 極低温下では電池の働きが鈍くなることを考えると、電池を使わない純機械式のカメラが 最もオーロラの撮影に向きそうです。しかし、純機械式のカメラは露出時間を長く設定できないので、 時計を見ながらバルブ(B)で撮影しなくてはならないのがやや面倒です。 電池が必要な機種でも電池交換の容易な(要するに三脚に付けたままでも電池交換が出来る)機種であれば、 カメラ本体の長時間露出機能や外部の長時間露出タイマーなどを利用しつつ、電池を時々交換する方が楽かもしれません。 昼間の撮影と共用にするのであれば、むしろ普段使い慣れた自動露出の電池式カメラでよいと思います。 そのかわり、電池式のカメラでは必ず予備の電池を用意します。 余談ですが、極低温下では、カメラのオート・フォーカスは電池の性能劣化やレンズの凍り付きにより よく動かなくなります。オーロラ撮影では焦点は無限遠に合わせるだけのためオート・フォーカスは使いませんが、 昼間の撮影では焦点がちゃんと合っているかよく確認したほうがいいと思います。 なお、一眼レフカメラに付けるレンズは、次のQ6で述べます。 Q6.一眼レフカメラを使う場合、どのようなレンズがお勧めですか? A6.広角系の単焦点レンズがお勧めです。カメラ本体がデジタルカメラの場合、開放絞り値が F2.8以下は必須、できればF2.0以下が良いでしょう。普及型のズームレンズはもちろん力不足ですし、 高級ズームレンズでも必ずしも十分とは言えません。 画角は、35mmフィルム換算の焦点距離で28mm程度が使いやすいようです。個人的にはフィルムカメラでは 28mmF1.8、EOS D30では20mmF1.8(換算画角32mm)を愛用しています。とは言うものの、いつの間にかレンズが増殖し、 今やオーロラ撮影に使うレンズは14mmF2.8、15mmF2.8魚眼、20mmF1.8、28mmF1.8、50mmF1.4。トホホ。。 ちなみに各レンズの特色は、、 15mmF2.8魚眼 オーロラが空一面に広がった場合に大変興味深い写真が撮れますが、普通の単焦点広角レンズほど 明るくないのが難点です。EOS D30などの普及型のデジタル一眼レフと組み合わせて使うと画角の問題もありますので、 フィルムカメラと組み合わせて使うのが無難かもしれません。 14mmF2.8 このレンズもやはりデジタルで撮影するにはやや暗いですし、オーロラが空の一部にしか出ていない場合は、 フィルムカメラで使うと空ばかりが大きくなってしまいます。明るくて空一面に出るようなオーロラ向きです。 50mmF1.4 オーロラが遠くで弱いときや、遠くの山などといっしょに撮りたいときなどお好みで。 ただし普通のオーロラでは画角が狭すぎる場合が多いです。 85mmF1.2 ・・・さすがに出番はありません。。 結局、20mm〜28mmあたりの明るいレンズが最も使いやすいということになります。。 Q7.いつの季節がオーロラ撮影に適していますか? A7.オーロラは春分と秋分のころ最も強くなると言われています。しかし、オーロラは雲の上での現象ですので、 天気が悪いと見られません。また、夏も白夜のため見られません。晴天率や夜の暗さを考えると、フェアバンクス近辺を含む 内陸アラスカでは2月から3月下旬あたりが最も見やすいようです。しかし、雲の上では年間240日オーロラが出ていると 言われていますので、夜が暗くなる9月から4月上旬あたりであれば、晴れさえすればけっこうよい確率でオーロラが見られます。 旅行日の決定には使えませんが、アラスカ大学では2,3日先までの オーロラ予報をしていますので、旅行中にインターネットにアクセスできれば天気予報とともに参考にされるとよいでしょう。 Q8.オーロラの撮影条件を教えてください。 A8.オーロラは、肉眼では見えないほど暗いものから、街灯の下でも見えるくらい明るいものまで いろいろあるため、決まった撮影条件は無いと考えるべきです。しかし、特別明るくはないけれど肉眼で見える といった標準的なオーロラの場合、絞りF2.0のレンズ(もちろん絞り開放)、ISO400のフィルム感度 (またはデジカメの感度設定)で10〜20秒くらいが適正露出の場合が多いでしょうか。これを中心にプラスマイナス 2段くらいの範囲(例えば4秒、8秒、15秒、30秒、1分)で露出時間を変えてみると良いでしょう。デジカメの 場合は短めに(露出アンダー気味に)、フィルムの場合は長めに(露出オーバー気味に)撮影した方が きれいに撮れるようです。 なお、カメラに詳しい方には言うまでもないでしょうが、フィルム感度が同じ場合、 F2.0のレンズの変わりにF1.4のレンズを使えば露出時間は半分、F2.8のレンズを使えば露出時間は倍にする必要があります。 また、レンズが同じ場合、ISO400の変わりにISO200のフィルム(または感度設定)を使えば露出時間は倍、 ISO800を使えば露出時間は半分になります。以下に標準的な撮影条件をまとめておきます。
注:実際の適正な条件はオーロラの明るさ、街灯や月光の有無などによる。 Q9.カメラに付いている夜景モードでオーロラは撮影できますか? A9.夜景モードといったものを備えているカメラがありますが、機種により機能が違うので、 オーロラ撮影に使えるかどうかはわかりません。ただし、一般的にオーロラは夜景よりはるかに暗いので、 マニュアル露出で撮影した方が良い結果が得られやすいと思います。 Q10.フィルムカメラの場合、フィルムの種類、感度はどれがいいですか? A10. フィルムの種類(ネガかリバーサルか)については、撮影の容易さの点ではラチチュード(明暗の写る範囲)が広く、 プリント時に明るさを調整してくれるネガフィルムの方が失敗が少ないです。 リバーサルフィルムはネガフィルムに比べラチチュードが狭く、撮影条件設定の難しさから あまりお勧めはできませんが、色がきれいに出るし、フィルムスキャナーで読み込むときの 色の設定が簡単なので最近私は使うようになりました。オーロラはスライド映写したくなるのも もう一つの理由です。あまり高感度なものが無いのが難点ですが、低感度のものでも 現像時に増感するという方法があります。いずれにしても何回かネガで撮影したことがある エキスパートな方にお勧めです。 フィルム感度については、一般的な低照度の撮影では、フィルム感度は低いものを使い、その分長い時間 露出したほうが画質面で有利なのは常識と思います。しかし、オーロラは時に激しく動くため、 あまり露出時間が長くなるのもオーロラがブレてしまって考えものです。 ネガフィルムはISO400か800、リバーサルフィルムはISO200か400を主に使い、 リバーサルで感度が足りない場合は必要に応じて現像時に増感するのが よいのではないでしょうか。 Q11.デジタルカメラの場合、感度設定や撮影モードはどれがいいですか? A11. Q10で述べた通りフィルムの場合は低感度でその分長時間露出したほうが画質は綺麗なのですが、 デジタルカメラの場合、高感度設定と長時間露出、いずれもノイズを増加させる原因となります。 この件についてはクリティカルな問題ですので実験を行ってみました(ここです)。 デジタルの場合でも低感度設定で長時間露出したほうが綺麗なことがわかると思います。 しかし、いくらEOS D30のISO100でも、1分を超えるような露出になるとさすがにノイズが 気になってきますから、そのときは感度設定を上げます。 また、オーロラの動きが激しい場合も感度を上げたくなりますが、デジタルの場合、 露出がアンダーでも後からレタッチソフトで明るくする「増感」ができるため、元からノイズの多い 高感度モードを使うメリットは必ずしも無いかもしれません。オーロラの動きが激しいときは、 低感度の設定のままで思いきってアンダーめ(短めの露出時間)で撮影し、後からノイズとのバランスを とりながら「増感」するのがよいのではないでしょうか。 RAWやTIFFなど、JPEG以外の撮影モードがあるカメラでは、「増感」の余裕を残すために各色の記録ビット数の多い RAWやTIFFモードを使うとよいでしょう。レタッチ時の「増感」は当然16ビットのモードで行います。 しかし、このような撮影モードの無い機種や、露出時間に余裕の無い機種では、無理せず高感度に設定します。 私はOlympus C-2000ZoomはISO400のJPEG、EOS D30ではISO200のRAWモードで主に撮影しています。 Q12.カメラの防寒対策はどのようにしていますか? A12.内陸アラスカでは、2,3月ごろの気温は-20〜30℃、時には-40℃にもなります。ほとんどのカメラはメーカーの 保証温度外での使用になりますので、経験的なことしか言えませんが、一部の純機械式カメラを除いて、フィルムカメラ、 デジタルカメラともに寒さの問題はほとんど電池に起因するようです。どんな電池でも-40℃の中での連続使用は無理ですので、 必ず交換用の電池を用意すべきです。寒さで弱くなった電池は暖めてやると復活しますので、予備電池を懐の中で交互に 暖めながら使用すると良いでしょう。可能であれば、懐で温めた電池ボックスや、車のシガーソケットなど、 外部からの電源供給を考えてもいいかもしれません。 カメラ自体をマフラーなどで包むのは有効ですが、それでも長時間の撮影となると内蔵電池の交換は必要です。 電池の種類を選べるならば、リチウムイオン蓄電池>ニッケルカドミウム蓄電池>ニッケル水素蓄電池> アルカリ電池の順で寒さに強いようです。氷点下ではアルカリ電池はほとんど使用不能と考えたほうがいいでしょう。 なお、純機械式カメラでは電池の心配はいりませんが、低温によりフィルムが割れやすくなっているので フィルムはゆっくりと巻き上げるようにします。 最後に、撮影後はどのようなカメラの場合にも結露に注意すべきです。カメラを暖かい室内に入れる場合には、 タオルやマフラーなどで包んだままビニール袋に入れるなどして、空気を遮断したまま徐々に暖めます。 何も気にしないとビショビショになるほど濡れて、最悪の場合カメラを壊します。 Q13.その他の注意点があれば教えてください。 A13.人間の防寒対策が最も重要です(笑)。内陸アラスカは乾燥しているため、始めは気温から想像するほど寒く 感じないかもしれません。しかし長時間野外にいると、足から深々と冷えていきます。厚手の帽子や手袋はもちろん、 顔はなるべく露出部を少なくするようにマフラーなどで覆います。体はダウンのコートなど空気のたっぷり入ったもの、 足は厚手の靴下の上になるべく生地と底の厚い靴をはきます。防寒着、防寒靴などはツアー会社でレンタルしている 場合がありますので、一回限りの旅行で来られる場合には相談してみるとよいでしょう。 実際の撮影では、凍傷に注意してください。手足の先などは寒さを感じる前に感覚が麻痺してしまう場合がありますので、 ちゃんと感覚があるかどうか時々確認しましょう。もし感覚が無ければ、どんなにすばらしいオーロラが出ている最中でも すぐに室内に戻るべきです。また、カメラを扱う場合も必ず手袋をしたまま扱い、素手を出すことは 極力避けます。三脚やカメラなどの金属部分に触れると指が張り付く場合があります。 最後に車の使用に関して。最近はツアーでなくレンタカーなどで自由旅行を楽しむ方も増えていると思いますが、 冬の内陸アラスカにおいて、車の使用は命にかかわる危険があると心得るべきです。-40℃にもなるとバッテリーの性能が 低下するだけでなく、ガソリンは気化しなくなり、エンジンオイルも凍ります。内陸アラスカ仕様の車はバッテリーやエンジン 本体に電気ヒーターが取り付けられています。車にはそれに通電するためのプラグが付いていますので、駐車中は 駐車場のコンセントにそれを繋いで通電してください。郊外などでコンセントの無い所に駐車する場合、 寒いときには絶対にエンジンを切ってはいけません。万一エンジンが再始動できなかった場合、凍死の危機に さらされることは容易に想像できると思います。冬場、私がいかにも楽しそうにドライブしているのを見て簡単そうに 思われる方もいるかもしれませんが、私は車の中に防寒着、寝袋、非常食、キャンピングストーブ、予備ガソリンタンク (寒いときに一晩中エンジンをかけ続けるため)、さらには予備バッテリーも常備しています。フェアバンクス市内の ドライブだけならここまで用意する必要はありませんが、郊外に出ることはちょっとした冒険であることを認識して おいてください。 その他のご質問がありましたら hiromins@yahoo.com までどうぞ! |