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夏のある日、 ケープ・コッドの南にある マーサス・ビニヤードという島に、フェリーで渡った。雲一つ無い素晴しいお天気で、太陽がジリジリと肌を焦がすのを感じるが、海風が心地よく汗を乾かしてくれる。島の名所の一つ、ゲイ・クリフという、赤味がかった岩肌の断崖絶壁が海にそそり立つ絶景のポイントまで小高い丘を登りつめた。青い空に映える赤褐色の断崖、打ち砕ける波の白とコバルト・ブルーの海のコントラストがたまらなく美しい。少し離れた所にカフェがあったので、そこの海に向かって張り出したテラスで、この素晴しい景色を堪能しながらお昼を兼ねて一服することにした。折り良く海に面したテーブルが一つ空いている。
席に着くと、眼下の海は、南の海を思わせるコバルト・ブルーと藍色が入り組み、降り注ぐ日差しをキラキラと照り返している。 まずは、ビールだ。こんな時は、きりりと冷えたビールに限る。そう思うと、心はもう、喉ごしの美味さを期待して高鳴っている。完璧な夏の日が、これで完結するのである。すると、注文をとりに来たウエイトレスは言う。
"Sorry, but it's a dry town."
"Dry town???"
"Yah, we don't have alcohol."
"You ... don't...?"
"No."
"NO WAAAAAAAAAY!!!"
確かに、かつては禁酒法があった国だけど、なんで、どうして、今この時代に、こんな所で、こんないいお天気で、こんなに素晴しい景色で、こんなに暑くて、こんなにこんなに…ビールが飲みたいのに、飲めないの???ドライ・タウンなんて、聞いた事無かった。誰もそんなこと、言ってなかった。こんなのって、ひどい。あんまりだよ。そして、完璧になるはずだった夏の日の午後は、パズルの最後のピースを失って、永遠に完結しない物語となるのである。
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