さて、今日はアナクサゴラスですね。まあ、たいした哲学者じゃないんですが、 若きソクラテスを熱中させた哲学者として有名でもあります。で、このオヤジは なにを言ったかというと、ようするに先のエンペドクレスが動力因を憎しみだと か愛だとかいう訳の判らんもんを挙げていたのに対して、このオヤジは「理性( ヌース)」が動力因であると説いたところに意義があったわけです。

といっても、「太陽は燃える石である」と喝破したことでも有名なように、彼は 基本的に唯物論者でありまして、何も理性を掲げる観念論者じゃありませんでし た。そこが、ソクラテスは「せっかく理性という概念を持ち出してきたのに、結 局のところ機械論じゃないか!」と落胆させたゆえんでもありました。

ところで、アナクサゴラスのアルケーとは何であったか、それについても触れて おきましょう。まず、彼は「スペルマタ(種子)」をアルケーと捉えました。そ して、このスペルマタはエンペドクレスのように四つの種類しかないものではな く、かといって現代科学のように113種類だか何種類だか忘れましたが、そういう 有限な数ではなくて、「無数」にあると考えたのです。

さて、万物はこの無数のスペルマタによって構成されてくるわけですが、彼の面 白い発想は、一つ一つのモノには全ての種類のスペルマタが含まれていると考え たところにあります。目の前のコップには、すべてのスペルマタが含まれている わけです。そして、目の前のコップと隣にある林檎が異なるのは、その無数のス ペルマタのそれぞれの種類の割合によってであると考えたのです。つまり、無数 のスペルマタのうち、ある特定の種類のスペルマタの分量の多さによって、物事 はその姿を変えてくると考えられたわけです。

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