そのとき、あなたは
あったかい‥‥‥
ここは?
そうか‥‥‥
死んじゃったのか、僕
‥‥‥‥‥
大したことないじゃないか死ぬことぐらい
いままでなんにもなかったんだから
父さんに捨てられて‥‥‥‥
叔父さんたちにやっかまれて‥‥‥‥
小学校へ行ってもいじめられて‥‥‥‥
それから他人の言うことなんかに見向きもしないようになった
だれかが話しかけてきても最小限に受け答えをする
相手の顔を見るのも憂鬱であるかのように
ずっとそうやって過ごしてきたらだれも僕に見向きもしなくなった
自分が望んでやったことなのに無性に吐き気がしてきそうだった
無性に悲しくなってきた
無性に死にたくなってきた
誰もぼくのことを見てくれない
しかし、それは僕の望んだこと
誰もぼくの存在を気にしない
これも‥‥‥僕の、望んだこと‥‥‥
死にたい
そうすれば誰にも会うことはない
他人の目を気にする必要もない
そして、他人に頼る必要もない
それは‥‥‥ひとりで充分だということ
親なんていらない
友達なんていらない
苦しいこともない
嫌なこともない
嬉しいことも‥‥‥‥
どうして僕だけがこんなつらいめにあわなきゃいけないんだ
ずっとひとりで‥‥‥‥
母さん‥‥‥‥
どうしていてくれないんだよ
言いたいことたくさんあるのに
母さんになら話せるのに
いや、母さんとなら話せるかもしれない
母さんと話がしたい
聞いてよ、僕の気持ちを
僕のココロを、そして僕に優しくしてよ
父さん‥‥‥‥
どうして僕を捨てたんだよ
どうして僕じゃ駄目なんだよ
どうして僕の前から消えたんだよ
僕は父さんにいて欲しかった
ずっと側に‥‥‥‥
そっと‥‥‥‥
それを、なぜ?
‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥‥‥‥
あ ・ や ・ な ・ み ・ ?
あれは‥‥‥‥‥
あのとき父さんに招へいされてこの街へ来たとき
道路越しに見えた少女は
振り向いたときにはもういなくなっていた少女は
綾波だったんだ
あの蒼い髪、紅い瞳‥‥‥‥
いつも僕の近くにいる
いて欲しいときに近くにいてくれる
それは綾波だった‥‥‥‥
僕は綾波のおかげで他人というモノに初めて接触した
初めて記憶に引っかかったヒト
他人なんて気にしなかったのに
綾波は僕に似てるんだ
だから‥‥‥‥
‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥
僕は目を開けた。見慣れた天井。見慣れた白い壁。そして、見慣れた蒼い髪が‥‥‥‥
僕は、ゆっくりと起きあがった。
蒼い髪の主、綾波レイがこちらを向いた。手には文庫本を携えてる。ずっとここで時間をつぶしていたように。
紅い瞳が僕を一瞥したあと彼女は口を開いた。
「今日は寝ていて。あとは私たちで処理するから」
僕も思わず答えた。
「うん、でも、もう大丈夫だよ」
「そう、よかったわね」
僕ははっとして彼女の顔を見た。
綾波は笑顔で僕の顔を見つめていた。僕にしかわからないくらいの微笑みで。
それから、綾波が椅子をたつ。
「綾波っ!」
「何?」
「あっ、その‥‥‥」
僕は呼び止めたものの返事に困った。‥‥‥寝ている間に見た夢のせいで。
もう忘れてしまっていた昔のこと、つらかったことを思い出しながら。
一人だったときのことを‥‥‥‥
そして、綾波も‥‥‥‥
「あの、もうちょっといてくれないかな」
「‥‥どうして?」
「わからない。でも、綾波に側にいて欲しいんだ。綾波じゃなきゃだめなんだ」
「‥‥別にいい」
「ありがとう」
綾波は僕の顔を見ると下を向いてしまった。頬を赤らめながら。
なぜだろう‥‥‥
ともかく綾波と話がしたかった。それだけは間違えない。綾波に側にいて欲しかったことも。
そして、綾波自身のことを知りたかったのも。
「夢を見たんだ」
「‥‥ゆめ?」
「そう、夢。きいてくれるかな?」
「‥‥ええ」
綾波に僕の気持ちを話そう。今までの僕や、これからの僕。
そして‥‥綾波のことも教えてもらおう。
お互いが知り合い、ココロを分かり合っていれば一人なんかじゃないから。
僕は僕から一歩前へ出ることができた。だから綾波にも‥‥‥‥
お節介かもしれないけど、綾波に悲しい思いをして欲しくないから。
そして、綾波に少しでも近づけるから‥‥‥
〜 Fin 〜
久しぶりに書きましたが、な〜んか妙なもん作ってしまいました。最後のシーンでわかったと思いますが第拾六話の最後の部分のAnotherStoryです。初めは回想シーンというかシンジの夢の中です。本文中の『あ ・ や ・ な ・ み ・ ?』の前の数行の点線部分は第壱話でシンジとレイらしきモノと初めて出会った時の回想シーンです。その辺を頭に入れた上で読んでいたでけると少しばかりわかりやすくなるかと思います(ただ単に状況描写するのが面倒だっただけですので)そして、そのシーンを利用して書こうと思ってた話があります。しかし‥‥‥いつのことになるのやら。遅くても一年以内には公開したいなと(笑)来年の春には絶対できるでしょう、たぶん。
1998.06.21 Written by nobu