良い睡眠では、目覚めがスッキリとして、ぐっすり眠ったという満足感が得られます。脳の眠りのノンレム睡眠と身体の眠りのレム睡眠がバランスよくとれると翌日は快適に過せます。睡眠時間は、昼間に眠気が生じることがなければ、8時間でなくても十分です。
眠れなくなったら身の回りのストレスチェックをして見ましょう。何か生活上の変化はなかったかを考え、それらの原因をとり除くようにします。しかし、特に原因がなくても、何らかのきっかけで不眠そのものに対しての不安と過度のこだわりから眠れなくなってしまうことがあります。眠ろうと意気込まず、就床時刻にこだわらずに眠くなってから床に就くことです。朝は毎日同じ時刻に起床して太陽の光を浴びましょう。太陽の光を浴びてから約16時間後に眠気が現れます。いつも同じ時刻に朝食をとっていると、その1時間ほど前から胃腸の働きが活発になり朝の目覚めも良好になります。夜食はごく軽くしましょう。軽く汗ばむ程度の運動を毎日規則正しくすると熟睡を促進します。昼寝は午後3時ころまでに30分以内ですると良いでしょう。
寝る前にすると良いこと7項目。 @ぬるめのお風呂。ゆっくりつかってリラックスする。Aお腹がすいたらホットミルク。空腹感を和らげて、身体を温める。Bハーブティーでリラックス。カフェインが含まれていないもの。Cアロマテラピーを楽しむ。ラベンダーやカモマイルなどの香りで不安・緊張を和らげる。Dヒーリングミュージックでリラックス。音楽、環境ビデオや軽い読書など自分が好きなもので眠りを誘う。E夜は控えめの室内照明にすること。F寝る前の軽いストレッチ。副交感神経に働きかける。
寝る前にしてはいけない7項目。 @熱い風呂に入ること。A勉強やテレビ、ゲームに熱中したり激しい運動をしたりすること。Bおやつや食事をとること。Cコーヒーや紅茶などカフェインを含む飲み物。D喫煙すること。ニコチンは交感神経を刺激する。E寝酒をすること。お酒による眠りは浅いうえに、途中で目がさめたり朝早く目が覚めたりする。F室内照明を明るくすること。体内時計を狂わせる。
睡眠中の激しいイビキ、呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感、十分眠っても日中の眠気が強いなどの症状は医師に相談することをお勧めします。
(健康さっぽろ 第16号 休養)
吐き気や頭痛、めまい、動悸、耳鳴り、トイレが近いなどの症状があって医師を訪れてみても、「特に異常が見当たらないので自律神経失調症ですね」と言われる事があります。
ところで自律神経って何でしょう。自律神経は、全身のすべての器官や臓器に細かく行きわたっている神経です。そして、血圧、呼吸、脈拍、消化、排便、排尿、体温調節、発汗などの生命を維持するために欠かすことのできない大切なはたらきを、交感神経系と副交感神経系の2系統によってコントロールしています。自律神経は一定の活動リズムを持っています。1日の中では、活動的な昼間は交感神経系が優位なので、心臓の働きが活発で体温も高め、尿の回数も多めです。逆に夜間は、副交感神経系が優位なため、体温も低く呼吸も脈拍もゆっくりで血圧も低くなっています。このように、健康な状態では交感神経系と副交感神経系は微妙にバランスをとって働いていますが、このバランスが何らかの原因で崩れることによって起こるのが自律神経失調症と言うわけです。
人は生物として危険を感じたときにとっさに行動できるように反応します。血圧が上がって呼吸や脈拍が速くなり瞳孔が散大します。これは、恐怖を感じる対象に出会ってストレスを受けたとき脳の視床下部が働いて交感神経系と内分泌系が働くことによるものです。
この太古に獲得した反応は、現代社会においてもいろいろな場面で呼び起こされます。職場、学校、家庭や近所での人間関係がうまくいかないといった日常の悩み、あるいは、身近な人の死、結婚、離婚、失恋、病気、引越し、転職、暴力・犯罪の被害といったライフイベントがあると、脳に強いストレスを受けます。すると、精神面とともに間脳の視床下部に中枢がある自律神経系や内分泌系さらに免疫系の働きまでもダメージを受けてしまいます。
自律神経は全身の全臓器に分布しているため、その症状は多岐にわたります。 だるさや疲れやすさ、寝汗、不眠、めまい、耳鳴り、頭痛、肩こり、しびれ、まぶたのけいれん、動悸、息切れ、胸痛、手足の冷え、むくみ、息苦しさ、のどの異物感、食欲不振、よだれ、口渇、吐き気、便秘、下痢、多汗症、蕁麻疹、掻痒症、鳥肌反射亢進、頻尿、残尿感、性機能障害、生理不順、更年期障害など。
診断は、心身両面に対して診察と検査を行いますが、まず身体的疾患を明らかにする事が第一です。治療も心身両面に対して行います。過敏性腸症候群・胃炎・高血圧・気管支喘息・神経因性膀胱・アトピー性皮膚炎などには薬物療法が行われ、更年期障害(のぼせ、ほてりや肩こり)や卵巣機能障害にはホルモン補充療法が行われます。身体的治療を続けてもなかなか治らない場合は、心療内科、神経科、精神科といった心のクリニックでのストレスケアが必要になります。身体症状だけを治療するのではなくて、同時に心のケアで精神面や感情面に受けたダメージからの回復を図ることが必要です。
心のクリニックでは、具体的な症状、現病歴、生活歴、家族歴、既往歴、日常生活の状況、性格など詳しい問診でストレスの原因を探って治療に進みます。治療は精神療法と薬物療法を並行して進めます。一般にカウンセリングと呼ばれる支持的精神療法では、医師が患者の悩みをよく理解して受け入れることにより、患者が安心感を持って徐々に自信を取り戻して、患者自身が持っている問題解決能力をうまく引き出して回復できるよう援助します。また、最近では認知・行動療法といって、患者が自分自身の心身の不調のメカニズムを理解して現実的な問題に対処して症状を克服できるようにする治療方法もあります。そのほか、一種の自己催眠法である自律訓練法やリラクセーション法を指導することもあります。薬物療法では、身体症状に対する薬のほかに、抗不安薬、抗うつ薬、睡眠薬などが処方されます。
心療内科には、パニック障害、強迫性障害、うつ病、摂食障害、社会恐怖などで悩む若い女性が多く訪れますが、これらの場合にも自律神経症状が合併して出現します。
パニック障害は、急に激しい不安に襲われて動悸や呼吸困難などの苦痛を伴った発作に襲われるものです。強迫性障害は、自分の意思に反してばかばかしい考えが繰り返し浮かんできたり、ある行動を繰り返さないと不安になったりする病気で、止めようとしても止められなくて苦しみます。うつ病は、気分が激しく落ち込んで意欲がなくなり自信がなくなって悲観的になり、内に引きこもりがちになります。摂食障害は、太ることを極端に恐れて拒食症になったり、大量に食べては吐くことを繰り返して過食症になったりします。社会恐怖は、多くの人の前で強い恐怖を感じたり、人にどう思われているかを気にしすぎたりします、そして、人と接する事を避けたり引きこもったりします。
自律神経症状が現れたら、自分の生活を振り返ってストレスをチエックしてみましょう。 ストレス解消のセルフコントロールとしては、日常生活の中に休養や遊びを取り入れる事が大切です。なかなか症状が良くならないときは、気軽に心のクリニックを訪れてみてください。
(FAMIEE SPRING 2002 NO.10)
昔は大家族で祖父母と両親とおじおばがいて兄弟姉妹の数も多く、兄や姉が幼い弟や妹の世話をしたり、背におんぶして遊びに出かけたりしていたようです。つまり知らないうちに赤ちゃんを扱う実習をしていたようなわけです。
ところが、最近のわが国では、核家族化が進んでいます。そのため、赤ちゃんを抱いたり幼い子と一緒に遊んだりした経験が全くない大人が、いきなり親になってしまうことも珍しくありません。抱き方やあやし方に自信が持てないとか、育児書のとおりに育児ができないなどと悩んでいると赤ちゃんの泣き声がストレスになっていわゆる育児ノイローゼになってしまう事があります。
育児ノイローゼになるのを避けるための第一に大切な事は、赤ちゃんをかわいく思えるようになること、そして赤ちゃんとの生活を楽しめるようになることです。母性本能のとおりに可愛がろうとしても赤ちゃんの扱いがわからないと気持ちがあせって悩んでストレスになってしまいます。これを防ぐには、子育てを自分一人で抱え込んでしまわないようにすることです。夫の協力、実家の援助、ベビーシッターや保育所の利用など工夫する事です。第2に大切な事は、完全な母親になろうとしない事です。赤ちゃんは要求があれば泣いて知らせます。泣いてから何をして欲しいのかを探すくらいにのんびり子育てを心がける事です。赤ちゃんと母親のどちらも犠牲にならないようにしなければなりません。第3に、育児の仲間を作る事、情報交換したりお互いに悩みを話し合ったり、ちょっと預かってもらうなど協力し合いましょう。第4は、お母さん自身が子育てとは別の楽しみを見つける事。夫に見てもらっている間に習い事やスポーツなどでお母さんが精神的にリフレッシュする事です。
最後に、産後には、憂うつになったりするマタニティーブルーや精神障害が起こることもありますので心配なときは専門医に相談してください。
(ママチャランド 2002年 3・4月号)