3年 総合的な学習の時間 環境コース
環境を守るために、環境を知ろう
〜Mの自然を守るために、自分たちにできることをさぐる〜
05 Oct. 2005
1 はじめに
「環境問題」を語るとき、人間自らの選択に委ねられている人間の活動そのものが重要な対象となる。地球温暖化・食料不足・エネルギーの枯渇など、現在マスコミ等で聞かれるさまざまな問題は人間が自らの生活の利便性を求めて活動を続けてきた結果である。
また、その原因として、さまざまな要因が複雑に関わっており、生物学や自然科学の枠内だけで解決できないところに難しさがある。
総合的な学習の時間では、身近なM山の環境にふれる体験を基本にしながら、現在起きているさまざまな環境問題について学んできた。3年生では、その中で見てきたMの環境を守っていくための方法を探っていく。
表1 3年間の環境学習の流れ
1年
[自然に親しむ]
・カワゲラウオッチング
2年
[自然に関わる]
・海の環境学習
・酸性雨調査
3年
[環境を守り育てる]
・河川環境管理財団訪問
・隅田川の水質調査
・M川の水質・生物・ゴミ調査
・川の環境を守ろうとする人の思い
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環境コースの生徒13人は、4月の意見交流で「川の生物調べをしたい」という生徒がほとんどであった。また、「川で遊ぶことが好きだから、自分の好きな川の環境を調べたい。」など、川の環境に対する関心が高い。
また、「山の環境がしっかり保たれていないと海にも悪影響があるので、山のようすも確認したい。」「Mと岐阜、Mと東京などで酸性雨の違いについて考えたい」「今年はアユが遡上してこないとよく聞く。川の環境が変化したのかもしれない。」というように、以前学習した山と川と海の結びつきや酸性雨の話をもとに自分のテーマを考える生徒もいる。
1年間の学習を通して自分たちの生活をふりかえり、環境への負荷を少なくする方法を見つけだし、ふるさとMの美しい環境を守っていくことにつなげたい。
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図1 M川とM(G県HPより)
2 研究の内容
(1)コースでつけたい力
環境コースでは、つけたい力を以下のように考えている。
i) 課題解決の能力
・自分の生活を見つめ直し、環境への影響をできる限り少なくする方法を考える力
・環境のために自分ができることを見つける力
ii)コミュニケーション能力
・3年間の学習から得たものをだれに向けて発信するかを考え、それに合わせた発信をできる力
・意見交流の中で、仲間の発言・発表から自分の考えの材料をみつける力
(2)研究仮説
生徒一人一人に、これまでの環境に対する見方を見つめ直させる体験活動や調査活動を指導計画に取り入れながら、ユニット学習の中でも意見交流や話し合い活動の場を確保することで、生徒一人一人が自己変革の願いをもつことができる。
(3)研究内容
i) 指導計画において
「自己の生き方を考える」とは、日常生活の中で「自分も環境を構成する一部であるということを意識する」ことととらえる。
年間指導計画では、1年間のテーマとしてM川を調べていく中で、自分が生きていること自体環境に影響を与えていることを気付かせていくことをねらいとしてさまざまな側面からM川の環境を扱う。この気付きが、環境コースで学習する中での自己変革の第一歩と考える。
ii)本時の中での指導の工夫
各ユニットの学習において、調べたことを発表しあう際には、相手にわかりやすい話し方・わかりやすい提示の仕方が必須となる。地図や写真を用いて説明することで聞き手も集中して発表を聞きやすくなるため、発表用資料の使い方などについて支援をし、個人発表の力をつけさせたい。
なお、学習の中で環境問題を扱ううち、往々にして問題を大きくとらえ過ぎて無力感に陥るおそれがある。環境問題の多くは地球規模でおこっており、そしてその要因はさまざまな条件が関連していて根本的な解決が難しいからである。環境を守るために行動を起こすことを考えさせるときは、一人一人になにができるかという視点で考えることを助言し、自分の身の回りを考えた発表、また身近な問題に気付いた発言を価値づけることが必要と考える。
3 実践
1年生の環境学習では、川の生き物調査(カワゲラウオッチング)でふるさとの川の美しさを体感した。調査は春夏秋冬とそれぞれの季節に行った。新入生は新緑の中で澄んだ水の中に入り、遊びながらの調査が学習の手始めとなった。そして、1年間のなかで川にも生命のサイクルや季節感があるということを知った。
また、川で遊び、魚を見ながら学ぶうちに、ごみが自然と目につき、「自然を守りたい」「美しくしたい」との思いが生まれた。
2年生では、同じ地名の縁でつながった海辺の町・M県M町での研修に臨んだ。自分たちの生活している山の下流でプランクトンや夜光虫を観察したり、海岸のゴミを分別したりという体験を通して、自然の恵みの循環を学んだ。
M町での研修を通して、豊かな森が豊かな海を育てるということを実感し、自然保護への意識を高めた。自分たちの川の下流にすんでいる人々の環境は自分たちとどう違うか、酸性雨などに興味をもって学習する中で、山と海はつながっているという認識を新たにした。
3年生では、環境について学んできたことの集大成として、自分たちが住んでいるMを流れるM川を切り口として、川をきれいに保っていくために何が必要か、自分たちはどうしたらいいか、なにができるかを4つのユニット学習の中で考えていく。
表2 ユニット学習の流れ
第1ユニット:「M川と東京の川はどう違うか」
M川と東京の隅田川とでは水質にどれだけ違いがあり、その原因はどこにあるか調べる。
第2ユニット:「自分たちのM川を美しく保つために」
M川のよさを体感し、この環境を守っていくために看板・ポスター作りによる啓発活動に取り組む。
第3ユニット:「川の環境を守ろうとする人の思いを聞こう」
長良川環境レンジャーの取り組みを調べ、活動している人々の思いを聞くことで自分たちの活動に参考とできるものを見つける。
まとめのユニット:「自分たちにできること」
1年間で学習した内容から自分が今後環境を守るために取り組んでいきたいことを考える。
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第1ユニットの中で特に重きをおいた活動として、修学旅行(6月)での河川環境管理財団子供の水辺サポートセンター訪問があった。ここでは川の水質調査の実習・川の環境と人間の活動についての学習を行った。
東京の市街地を流れる隅田川の河口付近と、岐阜の山に囲まれたM川との違い(川幅や水深・流速・水の色・におい、堤防や護岸・土地利用など)を観察した。また、隅田川とM川の水質を比較して、水質の違いの原因としてどんなものが考えられるか、これからの川の水質をきれいにしていくためになにが必要かを考えた。
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写真1 隅田川とM川の水質調査
東京は工場からのきたない水や、上流から流れてくる水によってよごれていました。また、海に近いということで台風に備えた設備など、特徴がありました。自分の目で見て調べることが出来て、私もみんなも満足できたと思います。
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もっとも印象に残っていることは隅田川での水質検査です。僕達はまず隅田川の水をくみとって、僕達がもってきたM川の水と、パックテストを使ってアンモニアとCODの含有量を調べ比べました。するとCODの含有量はMと比べると、1ケタ分も違い、アンモニアの含有量では2倍も隅田川の水は多いという結果が出ました。それに水の透明度ではMの水では2m以上まで透けて見えるという透明度だったのに対して隅田川の水では1mくらいまでしか見ることができないという結果が出て、M川の水と隅田川の水とではここまで違うのかとあらためておどろきました。
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上に挙げた生徒の感想文にあるように、修学旅行でしかできない活動として、東京の川の色・におい・周りの様子まで実際に体験したことが、もっとも印象深く生徒の心に残っていた。
また、子供の水辺サポートセンターでは「100億円あったら流域になにを作るか」と題して実習を行った。
各グループ画用紙1枚分の川と流域に、住宅地、公園や住宅地、水力発電所など作りたいものを自由に描いた。画用紙をつなぎ合わせて一つの川の流域の図としたとき、人間に便利な施設や、環境に影響なさそうな公園でも、除草・下水・排水・利用する車の廃油などで水質に影響を与えることを学んだ。
植物は環境にいいと思ってやったのに、葉っぱなどは川に悪影響だということが分かりました。僕はいいと思ってやったけれど、逆にあまり(緑地公園を)発達させない方がいいんじゃないかと思いました。
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僕達が住んでみたいと思っている都市を書いたら30という値(影響の度合い)が出たし、公園を書いただけでも10という値が出たので、僕達は生活しているだけで川に影響を与えているということが分かっておどろきました。
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また、川の環境を守るために調査・研究とともに普及・啓発を行っている人の話を聞くことは、自分たちにできることを考えるためのよい参考となった。
少しのことをやるだけで川などがきれいになることがわかりました。少しでもきれいになるようにがんばりたいと思います。
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一人一人の力が未来につながると教えていただきました。
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子供の水辺サポートセンターの人々のように、環境を思いとりくんでいる人々と少しの間だったけれど関わることができて、とても勉強になり、自分の姿を見直す貴重な時間でした。
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修学旅行で見てきた隅田川とM川の環境を比較するため、台風通過後の学校付近(M橋下流)でゴミの量や内容を調査した。
1時間あまりの活動でポリ袋に一杯のゴミが集まった。ゴミのほとんどが空き缶・ペットボトルであり、次に多かったのが細かいビニールの切れ端、そのほか菓子や弁当の包み、ガラス、花火、乾電池などさまざまなゴミがあった。中には、壊れたゴルフクラブなど大きいものもあった。
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写真2 M橋下流のゴミ調査
後日、見つかったゴミの内容から考えられることを交流した。
「飲み物食べ物の容器が多かった。集落からのゴミと、外で買った食事のゴミがM川のこの付近を汚くしている原因ではないか。」
「ゴルフクラブは、おそらく上流で捨てられたものが何回かの出水で流されてきたのだと思う。」という意見や、「ビニールの小さいくずが気になった。この場所は竹やササが多いために、流れてきたものが引っ掛かって止まりやすい場所だったのかもしれない。」などさまざまな意見が出た。
また、「自分たちが守っていきたいと思っているM川で、よく見るとこんなにゴミが多いのは残念だ。」というように、このM川を美しく守っていけるように自分たちが社会へはたらきかける必要性をあらためて意識した。
なお、ゴミ調査に先立って、M川流域の環境と川の環境とのかかわりを机上で考える時間を設けた。流域の地形図をもとに、標高や土地利用などの情報を読み取り、川の環境への影響が考えられるもの、自分たちの家の位置、それに自分たちのおすすめの場所として、「ここはアユが多い。」「ここは水が冷たくてきれいだ。」など紹介し合った場所も記入した。これらの情報をもとに、生物調査やゴミ調査の場所を選んだ。
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写真3 M川流域のマップ
学校付近でのゴミ調査の後、このマップを振り返って意見交流を行った。学校付近での調査結果と上流の土地利用のようすをもとに、上流ではどんなゴミが見つかるか予想し合った。
「同じM川でも、上流へ行くほど家屋の数が少なくなるから、空き缶などは少ないだろう。」
「上流には、バーベキューをよくやっている場所がある。食べかすなどのゴミは上流の方が多いかもしれない。」というように、今までの学習で得られた情報をもとに予想をたてることができた。
4 成果と課題
環境コースでのこれまでの学習の中で、以下のような成果がみられた。
●河川環境管理財団を訪れるにあたって、アポイントメントから移動計画まで自分たちで進め方を工夫しながら行うことができた。話す内容や作業内容を自分で検討して計画的に行動する中で、課題を追求する力やコミュニケーション能力がついた。
●「みんなが暮らしやすいように」と流域になにかを作ることが、川の環境に予想以上の影響を与えることについて、生徒の環境に対する認識が大きく変わった。
今後の課題として、以下のことが考えられる。
●発表を聞くときの聞き方の工夫や、得られた情報をもとに自分の考えをまとめる力を今後伸ばしていきたい。仲間の発表から自分の意見に参考とできることを拾い出していく中で、課題を追求する力やコミュニケーション能力をつけていきたい。今後の意見交流の場面等で、発表を受ける側の工夫も考えられるよう指導していきたい。