01/09/02 このサイトに何年もきてくれている方はNYNYや他のページで何度となく取り上げられているNYCの教育制度の話を覚えてはるかもしれない。今日はその特別教育の盛んなNYCでも一番斬新な団体の話。ぶつぶつのバックナンバーで何度となく触れたけど、NYCだけに限らずアメリカの小〜高等学校にはgifted
students(才能のある生徒)のための特別クラスやコースがある。(単にadvanced classesやaccelerated
programとも呼ばれ事もある。)さらにNYCにはその特別コースを普通の公立学校で受ける子供達をスカウトする団体がある。
Prep for Prep(ようするにPreparatory
program for preparatory schoolという意味)はNYCの公立学校の特別プログラムをPrep関係者が訪れて直接生徒をスカウト又は学校の推薦を通じて応募させて生徒を集めます。Prepは「学校」ではなくて小学生高学年の間(4年生〜6年生まで)の学校の後+夏休みの間に特別授業を行って、中学・高校への受験の手伝いをして目標の学校にその生徒が入学できた際には全額の奨学金を払ってくれる団体です。もちろんPrepの最終の目的は各生徒が大学・大学院を卒業する事なので、Prepからのガイダンス・カウンセラーが大学卒業までつきます。進学を主にした目的をもつ団体なので、もしPrep卒業者が大学を学問的な理由(落第等)で中退した場合には厳しいことにPrepにその生徒が存在した記録ごと消されてしまいます。
卒業生や大企業からの寄付でなりたっている非利益団体のPrepですが、創立からの団体の成功率が多額の寄付金を生んで、NYCの5区から始まったこのプログラムも今は市内にとどまらず、ウェストチェスター、コネチカット、ニュージャージーとトライ・ステイト・エリアまで広がっています。市外のプログラムはNew
York Metro Region Leadership Academy(NYMRLA)と呼ばれ近年はじまったようです。最近うちに送られてきた年間レポートに平均的なPrepの5年生の一日のスケジュールが載っていたので紹介してみます。
08時00分〜08時45分: 数学 (2つの変数のある方程式)
08時50分〜09時35分: 文学 (「偉大なる遺産」でのディキンズの特性)
09時40分〜10時25分: 歴史 (カール・マークスの読み物)
10時30分〜11時15分: Invictus
(ラテン語で「私は克服されていない」という意味−社会での公正、同級生からのプレッシャー等をロールプレイングを通じて討論。)InvictusはPrepのプログラムの代表例で、ここで自己のやる気とそれが生む力、それらが成せる事をいうのを徹底的に習うんだそうです。
勿論クラスの名前をみて「あっ!」と思われた方もいるかも知れませんが、William Ernest Henleyの有名な詩の題でもあります。Prepの生徒の家族の多くは小学生が将来の進学の為に日夜高校レベルの勉強を寝ずにするのを良く思っていない場合もあって、「誰のためでもない、自分の為に自分の力で」という事を教わるのにこの詩(ページ下)最初の授業で読まされるそうです。)
11時20分〜12時05分: 幾何学 (幾何学証明)
12時10分〜12時40分: アドバイザーとの面会 (時間の使い方、勉強法等を相談)
12時40分〜01時20分: お昼休憩
01時25分〜02時10分: 科学 (遺伝子学的地図)
02時15分〜03時00分: 英語 (論文の論点の組みかた)
03時15分〜04時30分: レクリエーション (サッカーとバレーボール)
04時30分〜05時30分: 自由時間 (ゲームや先生と相談をしたり、水泳の練習等にあてられる)
市内での学校の場合ここで下校
夏の特別合宿の場合はここから
05時30分〜06時30分: 夕食
06時30分〜07時20分: クラブ活動 (ボードゲーム、芸術等)
07時30分〜10時10分: 図書館で勉強
10時30分〜11時00分: 寮にて就寝
Prepの卒業生でもあるうちのクリスによると、彼がPrepに通ってた頃のカリキュラムは「これにもっとラテン語の授業を加えた感じ」という事です。(Prepが生徒を送る学校が古風な東海岸の寮制の高校やアイビーリーグ系の大学が多いのでカリキュラムは主に英語・数学・ラテン語を重視する傾向がある。)
ぶつぶつのところで才能の遺伝/環境論をいっつも問いてる私のこれに関する意見は「半々」やけど、Prepのスカウトが探している生徒は「才能」だけを見ているのでどんなひどい設備の公立学校に通っていようが候補者になるのには全く関係ないのです。同じく人種・宗教の宗派・国籍も問わないので、NYC内のどこに住んでようが公立学校に通っていて才能のある子供なら誰でも参加できるプログラムです。
直接Prep側から引き抜かれなかった場合は(クリスも選ばれたのではなくて応募したからこの後者にあたる)3年生からIQテスト、両親、生徒別々の面接もいれて7回程学力テストを受けるそうです。(生徒を個別に面接して「何故このプログラムに参加したいか」を問うんだそうです。そこで子供自身にやる気があるのではなくて、親のほうが必死になっている家庭の場合不合格になるよう)結構厳しい(精神的にも)プロセスですが、努力の後に受けれるプログラムの内容は素晴らしいので挑戦する甲斐は充分あるそうです。
又数年前に2人の学校教師がブロンクスとヒューストンではじめた Knowledge
Is Power Program(KIPP)でも同じような目的で運営される非利益団体で、Prepと同じくプログラム卒業生をNYC市内なら特別3校(ニューヨークの学校事情
その1参照) や地元の私立では Horace Mann、Riverdale Country、寮制の学校ならDeerfieldやExeterのレベルの学校に送っている優秀なプログラム。現在では2都市の他にシカゴ、アトランタ、ワシントンDC等にも参加校があるようです。KIPPは私立学校の施設を利用するPrepとは違って、公立学校の中に個別プログラムとして存在し、公立学校の中のaccelerated
programとして運営されるため、小学校5年生から応募+参加して、プログラムに合格できた際には生徒とその親が「真剣にプログラムの目的/目標を達する」という契約書のようなものに署名させられます。
プログラムのスケジュールは場所によってはPrepのものよりハードで朝7時から夕方5時までという従来のアメリカの学習時間の枠を何時間も上回ります。(だから親もちゃんと毎日1時間目の授業に間に合うように学校に連れて行って沢山の宿題を管理する義務があるのでサインさされる。)このプログラムのスパルタ的スケジュールって実は日本の学校での勉強時間が長いことなんかを元に構成されたそうで、年々教育水準が劣っていっている日本が基本っていうのがちょっと皮肉なんですが... 「ステレオタイプだけで判断するとできそうにない地域の子供でもやる気と時間があれば何でもできる」という創立者の若い兄ちゃん2人の意思のみが築き上げた若いプログラムも創立からすでに20年以上経ったPrepと同じ程の寄付金を獲得してぐんぐん成績をあげています。
Prep for Prepの公式ページでは生徒の進学先や寄付を収めている企業名なんかが全部公開されています。又、Knowledge
Is Power Program(KIPP)と共に団体の目的、どのような子供がよい候補者になるか、どうやったら子供を参加させられるかもしっかり記述してあるので興味のある方は覗いてみてください。
* Invictus
William Ernest Henley(1849?1903)
OUT of the night that covers me,
Black as the Pit from pole to pole,
I thank whatever gods may be
For my unconquerable soul.
In the fell clutch of circumstance
I have not winced nor cried aloud.
Under the bludgeonings of chance
My head is bloody, but unbowed.
Beyond this place of wrath and tears
Looms but the Horror of the shade,
And yet the menace of the years
Finds, and shall find, me unafraid.
It matters not how strait the gate,
How charged with punishments the scroll,
I am the master of my fate:
I am the captain of my soul
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