February 5, 2002

実験音楽とMac OS Xの関係

昨晩はサンフランシスコのYerba Buena Center of Artで行われたEarplayという催しにカミさんの桜花と2人で出掛けてきた(彼女のサイト「桜花通信」2002年2月4日付の記事にコンサートの様子の写真も掲載されている)。実験的な現代音楽を作曲される今井さんを含む3名の作品が演奏されるという事で、ご招待を受けた次第。彼の作品はチェロ奏者の演奏とMAX/MSPを使ったサウンド効果が複雑にからみ合ったもの。チェロ奏者の演奏の他、リアルタイムにチェロの音を変換したり、前もってサンプリングしていた音を複雑に加工するなどし、とても緊張感のある素晴らしい世界を築き上げていた。

ちなみにMAXというソフトはMacで動作する「自分だけの」音楽のためのソフトを「プログラミング」できるというソフトで、特に実験的な音楽制作を行っている人たちの間では非常に良く使われている。またMAXで直接オーディオ処理を行うためのプラグがMSP。説明が難しいのだけど、普通のCubaseなどが一般的な音楽を作るためのものだとすると、それに飽き足りなく、自分専用にいろいろな処理をプログラミングしてでも作りたいと考える人に愛されている。例えて言えば、僕は昔に数学処理用のソフトMathematicaを使って不思議な図形を描画させ、それをグラフィックに使うという事があったが、MAX/MSPを使うという事ははそれを音楽や音声効果で行っている…というのに近いのかもしれない。

今回わざわざ僕らを招待してくれた今井さんは実はpierre designの読者で、Mac OS Xにかなり期待されているとか。彼は日本の大学、そしてフランスのIRCAMで実験音楽について学ばれたそうだが、そうした学校ではNeXTCubeを利用して音楽制作を行っていたという。このため音楽制作以外でも---例えばWebブラウズにはNeXTStepでOmniWebを使うというように---NeXTを利用されていたという。

実はフランスのIRCAMはNeXTが登場した当時にはかなり入れこみ、NeXTで音声処理を行うことが出来る専用DSPカード(IRCAM Sound Work Processing Station)を開発しているたそうだ。また、上記のMAXというソフトも元々IRCAMでMac用に開発されたもので、そのMAXでIRCAM Sound Processing Workstationを利用するためにMAX自身もNeXTStepに移植され、専用のMAX/FSPというソフトが作られたという。

結局IRCAM Sound Processing WorkstationはSGIやLinux機で利用できるようなっていくほか、その開発者は米国に移ってカードの処理をソフトウエアで実現するPdをSGIやNT向けに開発するようになったようだ。一方、ソフトウエアのMAXの方は商業バージョンをデビット・ジッカレリ氏が開発。以後Opcode社よりMac向けに発売が行われ、当初はMIDI専用であったものの、前記PdやIRCAM Sound Processing Workstation用のMAX/FSPで実現されていた機能をPowerPCの能力で実現するためMax/MPSに進化する。現在はCycling 74という会社が開発/販売を引き継いでいるこのMAX/MPSを利用し、PowerBookやiBookのみで以前は大掛かりなNeXTベースのシステムが必要だったことが実現できるようになっているという。今井さんは主催者が用意したiBook Dual USBで、そして僕らがライブによく行くCarl Stone氏はPowerBook G3だけを使っている(桜花通信2002年1月22日付、そして2002年1月24日付日記を参照)。

現在はClassic Mac OSで幅広く使われているMAX/MSPだが、Mac OS X版の開発も現在進行しているという(本当は昨年中に登場するはずだったが…)。NeXTとMacの2つのプラットフォームが1つに組合わさるMac OS Xに2つのプラットフォームで活躍していたMAXがもうすぐ動作するようになる。

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