一.現 状
いま、学校では子どもの「理科離れ」起きている。こんなことが叫ばれ出したのはつい最近であった。
しかし、1994年に日本科学技術振興財団が実施した調査によると、意外な結果が出た。これは関東地方の小学生5,6年生と中学生の計約5500名に対して行ったものだが、「理科が好きか、嫌いか」という問いに対して、好きと答えた生徒は小学生の5年生の85%を最高に、小学生全体で60%となった。逆に「嫌い」は学年が上がるにつれて高くなり、中学2年生女子で54.7%、中学3年生女子で53.2%であるが、男子は中学生2年生でも最高が33.9%になっているという。総体的には年齢が高くなるにつれて「理科離れ」は高くなるといえるが、特徴的なのは女子の中に理科好きが増えたということだろう。
これを理工系大学への進学率でみてみると、文部省の調査によると大学志願者数のうち理工系の受験生比率は、1985年の24.8%から1993年の19.9%に落ち込んだという。実験実習の拘束時間の多さ、バブル崩壊後の理科系が就職に有利という神話が崩れたことなどが「理工系離れ」への要因としてあげられている。
文部省では1995年度予算ではじめて「理工系教育推進経費」として約1億円を計上し、24の国立大学と20の工業高等専門学校に予算配分した。また、1995年12月には「科学技術基本法」が成立したが、これはわが国の科学技術の水準を向上させることを目的に、基本的な方向を定めた法律であった。成立の背景には基礎研究の立ち遅れ、研究予算の伸び悩み、学際的な取り組の欠如に対しする危機感があるといわれている。
そして、1996年度予算案で科学技術振興費は「経済構造改革」の柱として破格の10%程度の高い伸びが認められ予算の目玉となった。また文教政策においても科学研究費補助金が昨年同様924億円となった。この分野に対する期待の大きさとともに諸浦に対する危機感の顕著なあらわれともとれる。
「理科離れ」が最終的にいきつくところは、日本の科学、技術、製造業の空洞化といわれている。そうなれば日本の技術立国としては存続は非常に危うい。日本の若者に将来の日本に、科学、技術、製造業の重要さ認識させることが大切である。これを達成する場が学校という教育ステ−ジである。とりわけ科目の授業を超えた特別活動では、児童生徒への関心付けと浸透が効果的と考えたい。若者の「理科離れ」に対していま全国の大学では、あの手この手のさまざなな試みを開始した。とくに今年最も関心が高かったのは国立岐阜大学工学部で、高校生を対象にした「体験入学」であろう。これは大学でも始めての試みであり、大学見学からさらに一歩先を行った活動とともに「開かれた大学」「魅力ある工学部」「夢のある工学部」などをアピールする絶好の機会であったという。
ここに紹介したのほんの一例であるが参考まで(「読売新聞」10月2日付け掲載)
二.学校における現状
全国の高校生数は約485万5000人、そのうち工業科をはじめ農業科や商業科の生徒数は全体の約4分1にあたり、これらの専門高校は生徒集めに苦労しているのが現状という。
「理工系離れ」がすすんでいると言われているなか、学校における工業系の活動はこのところ活発な状況にある。大学の理科離れに対する事業はすでに述べたが、とりわけ専門学校や高等専門学校、工業系高校がたいへん元気だ。各校とも専門分野や専門技術を前面に出してピ−アルしている。まさに高校進学の普通科志向に一石を投じた感がある。
工業系高校の活動例としては、恒例となった秋の全国産業教育フェア開催をはじめ、都道府県単位での工業高校のロボット競技大会、93年から始まったという高校の相撲ロボット全国大会、学校週五日制を利用した土曜日の学校を解放してパソコン教室を開催するた高校もでてきた。
また、1995年の夏に小学校から高校までの児童生徒を対象に大学、高等専門学校がさまざまなイベント、催しが開催された一例を紹介すると次のようなものがある。
例)国立オリンピック記念青少年総合センタ−
「夏休み中学生科学実験教室」…4泊5日の泊まり込みで、四つの実験に取り組む。テ−マは阪神大震災から「災害の科学」で、地震計や火災報知器を手作りで試みるという。
例)「サイセンスセミナ−・イン・サマ−」…5泊6日、静岡で開催。
例)「科学と遊ぼう ジュニアサマ−・スク−ル」…7泊8日、北九州市で開催。
例)国立研究所「サイエンスキャンプ」…高校生対象の2泊3日科学教室開催。
例)数学オリンピック財団のサマ−セミナ−…5日間、30人の天才数学少年を集め、大学教員を相手に数学ざんまいの生活を送る。
三.「理科離れ」「理工系離れ」への提案
・学校のクラブ単位でのイベントへの参加促進
これらは一般向け、大学専門学校向けというのが多いが積極的に高校中学校からの参加 を勧めたい。もちろん高校生対象、学校対抗の大会もある。
・「ソ−ラ−カ−レ−ス」
・「ロボット競技大会」
・「ペットボトルロケット」
・「モデルロケット大会」
さらに発展させるなら、海外での大学研究組織が開催するロボット競技大会にエントリーするのもいいだろう。この意味では当然国際親善や国際人育成にも役立つ。
・学校間研究クラブ
学校を超えたテ−マで生徒による地域の代表として研究組織、情報交換組織が結成できないか。学科により「○○研究会」を発足させるのもいいだろう。
・理系専門教職員の研修
理科の楽しさを教えるためには、まず先生自身がその楽しさを知る必要がある。教員側での意識改革がまず必要だ。そのためには大学研究所と小中高校の教職員との情報交換や意見交換、交流を活発化していくことも重要ではないかと思う。実際に実施した珍しい例では、東京学芸大学が一九九五年夏に教職員対象の「理科教室」の公開講座を開催したことがある。
・先端科学技術の見学視察
思い切って日本の最先端の科学技術を誇る研究所や大学研究所を視察見学することを提案したい。今や大学の理工系の研究機関は理科教室開催や教授による出前講義などウエルカム状態であり協力的でもある。もちろん研究に支障をきたさない程度にだが…修学旅行の一訪問施設に組み入れてみるもの一案か。
〔過去教室を開催した研究施設〕
・宇宙開発事業団
・東京大学生産技術研究所、物生研究所
・航空宇宙技術研究所
・海洋技術センター
〔過去理科教室を開催した大学研究施設〕
・筑波大学
・早稲田大学理工学部
・国学院大学
・慶応大学理工学部
・東京工業大学
・岐阜大農学部
・京都大学農学部
・九州工業大学工学部
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