一.コンピュ−タ−を取り巻く日本の概況
1995年は「マルチメディア」「インタ−ネット」という言葉が世の中を賑わした年はなかっただろう。11月23日、大騒ぎしたマイクロソフト社の「ウインドウズ95」発売は記憶に新しい。「買って直ぐ使える」という巧みなキャッチコピ−、大々的な広告宣伝に乗せられたお父さんまでが、後先を考えずにこぞって買ってしまったという。この「ウインドウズ95発売」はやや騒ぎ過ぎといえばそれまでだが、日本経済全体が景気低迷にあるなか情報機器、家電業界は昨年に引き続いて絶好調業種といえる。
振り返れば本の数年前まで、ニュ−メディアと呼ばれていた一時期もあったが、その時は別に取り立てて騒ぐこともなく、いつの間にか消滅してしまった。それがここ数年になってからは「マルチメディア」より「インタ−ネット」が声高らかに叫ばれたのが1995年だった。
マルチメディア時代の中で、パソコンが主役であることはほぼ間違いない。パソコンはインタ−ネットを中心として世界への窓口となり、世界の人々との時間的距離をより身近なものにした。しかし一方ではマルチメディア社会は日本の産業構造、企業組織、人間関係までを根本的に変えるというマイナス面も指摘されているが、それ以上に私たちの生活に与える恩恵の方が大きいだろう。マルチメディア社会がはたちの時間的負担を軽減してくれ、距離的障害の垣根を取り払ってますます便利になるだろう。
1884年の国内マルチメディア市場規模は、1兆6225億円で前年比35.1%増。ハ−ド部門が9090億円で対前年96.6%増、ソフトが6518億円で対前年4.8%増、サ−−ビスが617億円で対前年43.5%増であった。
1995年度のパソコン国内出荷台数は550万台となる見込みで、1994年度の335万台に比較して約1.6倍近くになるという。
市場が急激に拡大した背景には九四年に始まった低価格化傾向があげられる。とくにワ−プロ、票計算、デ−タベ−ス、ゲ−ムなどのソフトを予めセットアップしたオ−ルインワン型のパソコンの価格が下がったことが大きい。
日本ではパソコンの普及率は現在10%前後だが、2000年には40%を超える見通しである。アメリカでは成人男女の37%が家にパソコンを保有しており、そのうち四五%がオフィス、学校、家庭で毎日使用しているという。日本における一般家庭でのパソコン一人一台の時代ももうそこまできている。
二.学校教育におけるコンピュ−タ−教育の現状
公立小、中、高校においてコンピュ−タ−を設置している学校は、86%となることが文部省の調べで分かった。しかし指導できる教員は6.5人に一人と低い数値になっている。
新学習指導要領の本格的な実施にともない1993年から中学校の技術家庭科にコンピュ−タ−について学ぶ「情報基礎領域」が新たに設置された。
1994年のコンピュ−タ−を設置している中学校の割合は九九.四%(1993年98.4%)、コンピュ−タ−の平均設置台数は23.1台(1993年より1.0台増)、教員の中でコンピュ−タ−を操作できるのは44.3%となっている。
高校においてコンピュ−タ−を設置している学校の割合は100%(1993年99.9%)、コンピュ−タ−の平均設置台数は57.5台(1993年より3.9台増)、教員の中でコンピュ−タ−を操作できるのは49.9%となっている。
高校におけるコンピュ−タ−教育は、新学習指導要領のなかに「情報教育」が盛りこまれているが、普通科ではまだまだ入り口段階であり、職業学科に大きく遅れをとっている。という現状だ。1995年9月の私立大学情報教育協会の調査、全国の国公私立高校約2700校からのアンケ−トによれば、情報教育を実施しているのは職業学科では100%に近く、普通科では57%。履修学年も1,2年に職業学科が実施しているの対して普通科は三年になってから選択科目というのが多い。授業でのパソコン使用可能一人一台の学校は職業学科は8割、普通科で六割である。内容も即戦力の期待される職業学科はより専門的な内容に及んでいるのに対して、普通科ではパソコンの起動終了、キ−ボ−ド操作、日本語入力、文書作成など比較的初歩の操作教育になっているという。
三.コンピュ−タ−教育の課題
コンピュ−タ−教育の課題としては、情報の管理、情報社会の特質、情報の倫理、デ−タベ−ス、通信などの情報の取扱いに関する授業がほとんど行われていないことだという。 文部省の新整備計画では、情報化社会への対応として授業時に使用できるコンピュ−タ−台数を、1999年までに小学校で二人に一台、中学高校は一人一台に行き渡ること、また2000年までにすべての先生に「操作できる」ようになってもらいうことを目標としている。
しかし、ハ−ド面の普及は着実に進んでいるものの、消費財としてのコンピュ−タ−耐久年数は年々短くなっており、せっかく購入した機器が数年後には時代にそぐわなくなり古くなってしまったり、習得した技術が活用しにくくなってしまうことが考えられるだろう。
ソフト面では学習指導上でコンピュ−タ−を活用する指導ができる教員は全体のわずか15.4%(前年比1.7%増)にとどまっている。このような現状から指導する側の人材育成が数年前より急務といわれている。1995年度からは教員歴10年目、20年目の教員研修ではパソコン研修の時間が増やされているという。年配の諸先生方がコンピュ−タ−を敬遠しがちというが、学校においても企業と同じ事情のようだ。日々進歩し続けるソフトやハ−ド機器、技術に着いていくこともさることながら、新しい情報、技術を常に維持し続けるということの方が多大なエネルギ−が必要だ。先生たちの今後の奮起がおおいに期待されている。
四.コンピュ−タ−教育への提案事項
この分野についてははっきりと解決すべき課題は明らかであるといえないだろうか。それは教える側(先生)のコンピュ−タ−操作技能力のアップ、全体のレベルアップだろう。 マルチメディア、パソコンブ−ムの中で宿泊をともなった中高年の「パソコン合宿講習」がたいへん好評だという。
<学校教職員パソコン合宿>
もはや規定通りのパソコン研修では追いつかない所までハ−ド整備面ではほぼ完了している。
しかし、操作できる指導者が少ないことは、まさに宝の持ち腐れとしかいいようがない。
もっと民間のパソコン講座を利用するのもいいだろう。冷たい言い方だが身銭を切らなければ、本当に自分の身にはつかないものだ。宿泊形式で集中できる環境において、一気に習得してしまうのが効果的だと考える。
例/山荘を貸し切っての大自然の中でのパソコン講習
例/都心部ホテルでのパソコン講習
<マルチメディア講演会の開催>
学校におけるコンピュ−タ−教育は全体的に初歩レベルであり、これから広く知らしめる啓蒙段階にあるといえる。その意味では生徒も先生も情報の取り扱い、情報管理の基本的考え方を基礎から学んでみてはどうかと考える。特にソフトの普及にともない違法コピ−、著作権や情報管理等の権利保護、運営面での意識が稀薄である現状から、もっと操作教育と並行してすすめていく必要があるのでないかと思う。
<インタ−ネットで国際交流>
すでに実施している学校もあるという。従来は一部のパソコンマニア先生が、電子メ−ルを介して全世界にメッセ−−ジを発信していたというのが現状だろう。
しかし、今やインタ−ネットの時代。これからはインタ−ネットを使って世界の学校と交信できる。このパソコン上での交流がきっかけになって、修学旅行を実施する学校もでてくるだろう。またインタ−ネット上で意見交換会、シンポジウムなど海外に行かずして、多くに人々と人的交流ができる。生徒にとっては英語の学習にもなり語学力もアップすることになる。
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